Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

モニュメント一般公開日でアムステルダムへ

2011-09-11 10:50:23 | Wblog:お出かけ
今週末は、Open Monumentendagといって、オランダじゅうで毎年のテーマにあった美術館、博物館、史跡、建築物などが無料で一般公開される日でした。普段は入れない建物なども公開されます。これは、オランダ全土のイベントなんですが、私たちはアムステルダムに行くことにしました。
アムステルダムでは60箇所以上、公開モニュメントがあるので、全部は回っていられません。
そこで、厳選したいくつかだけ見て回ることにしました。
まずは、Beurs van Berlage。ダム広場の近くのバイエンコルフの向いにある、レンガ造りの巨大な建物です。概観はそっけない工場のようですが、中は違います。ベルラーヘが20世紀末に商品市場用の建物として設計したもので、細部にこだわるベルラーへだけあって、椅子や時計、壁の青や黄色のレンガの配置、階段のそばの絵、ドアの上の表示のデザイン、傘置きのデザインなどなど、あらゆるものが芸術作品です。現在、株式取引所はそばの別の建物に移っており、イベントやコンサートなどの貸しホールとして使用されているそうです。自由に見て回れましたが、ガイドツアーもあったので、参加しました。これに参加すると、ふつうでは見れない地下の大金庫や、ステンドグラスの美しい小さめのホールや、アムステルダムが見渡せる塔に登ることができました。地下の大金庫に通じるドアは、15cmくらいの厚さのあるもので、その複雑な鍵のシステムが見え、とても美しいものでした。
ちょうどお昼どきだったので、近くの中華街まで歩いて、ランチを食べました。
そして、Ons' Lieve Heer op Solderへ。これは、概観はふつうの家か倉庫のようにしか見えませんが、中が教会になっている建物です。オランダ17世紀、アムステルダムはカルビン派の新教会が大勢で、カトリック教徒はひそかに信仰を守っていました。この建物は、3階から上が教会で、狭いですが、黄色を主体とした、とても明るく豪勢なインテリアで、教会という空間の崇高さを感じさせる造りとなっています。ここは、普段はミュージアムとして公開されており、この日は無料でした。ハンドホンでの解説(英語あり)もついており、じっくりと見てまわることができました。
最後は、The Grandというホテルへ。ここは、最初は修道院として建てられ、19世紀はじめにアムステルダムの市庁舎として使われ、1992年からはホテルとなっています。現在は一泊500ユーロくらいの5つ星の高級ホテルです。自由に見ては回れず、ガイドツアーに参加する形でした。目を見張るようなインテリアが各所にあり、また市庁舎時代に婚姻を行なう部屋として使われたところは、四方の壁一面にグリーンを基調としたアールデコの絵(婚礼にちなむ人物や装具品)が描かれ、すばらしい雰囲気でした。また、カフェの脇には、カレル・アペルの絵がありました。
時間は4時近くになっており、雨が降り出してきましたので、帰途につきました。
建物なので、階段も多く、かなり疲れました。アムステルダムは、立派な建物が多く、古い建物を改修してうまく使っており、ニューヨークやロンドンのような大きさはありませんが、リッチな町だと再確認しました。
体調は良好。

クラシックコンサート:Radio Filharmonisch Orkest、Nikolai Lugansky(ピアノ) 、Nationaal Jeugdkoor

2011-09-09 08:10:23 | Concert
芸術の秋、クラシックコンサートに行ってきました。場所は、Vredenburg。このコンサートが、新しいシーズンのオープニングコンサートで、会場は満員でした。
Radio Filharmonisch Orkest(オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団)、ピアノがNikolai Lugansky(ニコライ・ルガンスキー)、Nationaal Jeugdkoor(オランダ国立若年合唱団<19歳から29歳までの女性>)のコラボレーションです。
演目は、
Debussy/Escher - Six épigraphes antiques
Ravel - Pianoconcert voor de linkerhand(左手のためのピアノ協奏曲)
Poulenc - Litanies à la vierge noire
Debussy - Nocturnes
でした。
感動したのが、ラベルの左手のためのピアノ協奏曲。この曲の存在は知っていたのですが、きちんと聞いたのは初めてでした。高名な哲学者ウィトゲンシュタインの兄、パウルはピアニストでしたが、第一次世界大戦中に負傷して右腕を切断してしまいました。ウィトゲンシュタイン家は非常に裕福でしたので、当時の作曲家に左手だけで演奏できる曲を依頼し、それに応えてラベルが作曲したのがこの曲です。
今回この曲を演奏したルガンスキーは、ロシア出身のピアニスト。現在39歳で、油がのった感じのとても正確で知的な演奏です。このピアニストを見るのは2回目。前回は、アムステルダムのコンセルトヘバウで、プロコイエフのピアノ協奏曲第2番を聞きました。好きなタイプのピアニストです。
金曜日にVredenburgで行なわれるコンサートは、8時15分開演ですが、7時半から無料の講演がついてきます。当日のコンサートの演目について、30分くらいで簡単な説明をしてくれるのです。私はいつもこの講演も聴くことにしています。また、かなり詳しいパンフレットももらえます。
この講演のために席についたら、舞台のすみに置かれたピアノを弾いている人がいました。調律している人かなと思ったのですが、すばらしい指裁きで素敵な音色。よく見るとルガンスキーでした。練習していたのですね。その時は、赤いシャツにジーンズ姿でした。
ドビュッシーのノクターン(夜想曲)は、第三部の「シレーヌ」で合唱団が歌います。歌うといっても歌詞はなく「アーア」という声で、声を楽器として使っています。シレーヌは、ギリシャ神話に出てくる海の魔物セイレーンですから、その惑わされるような幻想的な感じがよく声で表現されていて、またオーケストラとの音のバランスもよく、とてもよかったです。
指揮者は、Serge Baudo(セルジュ・ボド)。リヨン国立管弦楽団やプラハ交響楽団などの主席指揮者を務めた大御所で、84歳です。小柄ですが、指揮裁きが軽快かつ確実で、独特のリズムがあり、見ていて気持ちよかったです。若い頃には、ルイ・マルの映画の音楽の作曲などもしていたそうです。
体調は良好。血圧が低め。

本『遠い朝の本たち』

2011-09-06 07:56:55 | Book
須賀敦子著『遠い朝の本たち』を読了。
須賀敦子さんの本は、『コルシア書店の仲間たち』や『ミラノ 霧の風景』などエッセイをずっと読んできて、その静かな強さと身体に沁みこむような文章に魅了されてきました。
イタリアというと陽気で軽薄なイメージがありますが、須賀さんの本を読むと、芯の強さと個人の思考の深さを感じます。
須賀さんが、1998年に亡くなったとき、ああもうこの独特なイタリア関連のエッセイを読むことができなくなるのかと、とても残念に思いました。享年69歳。まだまだ活躍できる歳だったのに…。
同じような残念な気持ちは、米原万里さんが56歳で亡くなったときも強く感じました。ロシアや東ヨーロッパに造詣が深く、彼女にしか書けないものがありました。
『遠い朝の本たち』はイタリアものというよりは、著者が子どもの頃の体験、そして人生について、本をヒントにして綴ったものです。語られる本は、私は世代が違うために知っているものはあまりありませんでしたが、自分の子どもの頃の読書の体験を思い出し、新鮮な気持ちになりました。
この本は、亡くなる前の時期に書かれたエッセイを集めたものです。もう新しいエッセイを読むことができないかと思うと、悲しいです。
テレビやメディアや人の噂話では、ふわふわした人間や調子の良い人間がもてはやされることが多いですが、須賀さんの本を読んでいると、ただただ真面目で真摯な文学少女が自分が大切だと思うことを大切にして生きていくことの凛とした美しさを感じることができます。
体調は良好。

Restautant:Taj Mahal(ユトレヒト)

2011-09-02 08:49:12 | Restaurant/Cafe
ユトレヒトに行く用事があって、そのあと夕食をとろうと思い、インド料理店「Taj Mahal」に行きました。なんかスパイシーなものを食べたい気分でしたので。
インド料理店といえば、昔、赤坂のモティによく行っていて、美味しい印象が強く残っています。そのレベルを期待して行ったのですが…。
スペシャルメニューの一つ「タージマハル」を注文しました。
まずは、前菜として、samosa & onion bhaji。どちらも美味しかったです。
そして、メインのタンドリーチキンなどのミックスグリルと、3種類のカレーlamb bhuna & chicken massala & vegetable bhaji(写真)、そしてbasmati rice & nan、mixed salad & Indian chutneysがついてきます。タンドリーチキンは味がしっかりついていて、よいお味でした。他に、チキンやミンチスティック、ポークのグリルも一口サイズでついてきましたが、それらは特に美味しくはなく、フツーのお味でした。カレーは、ラムとベジタブルは予想通りの味で美味しかったですが、個人的にはラムはもっとスパイシーなほうが好きです。最初に「ラムはマイルドは味ですが、もっと辛くしますか?」と尋ねられたのですが、「ほんの少しだけ辛く」と答えました。「かなり辛くしてください」と言うべきでしたね。チキンマサラはココナッツミルクのよく効いた甘いカレーで最初はいまひとつだなと思ったのですが、ナンにつけて食べているとクセになりそうな味でした。ナンは焼き立てで、バスマティライスもハーブがよく効いていました。
そしてデザートは、kulfi。ハーブの効いた、ナッツが入った濃厚なアイスクリームでした。
おしゃれな雰囲気ではなく、庶民的なカジュアルなレストランです。お客さんも次々に入ってきて、繁盛しているようでした。テーブル間はせまく、ちょっと窮屈な感じもします。料理はテンポよく出てきて、あまり待ちませんでした。
トータルに考えて、もう一度行ってみたいレストランです。今度は、アラカルトで注文して、Hotという表示のある辛いカレーを食べてみたいです。ほんとうのインド人がやっている本格派インド料理だと思います。
体調は良好です。


本『De Pianoman』

2011-09-01 10:04:01 | Book
Bernlef(ベルンレフ)著『De Pianoman』を読了。オランダでは、読書週間中に本を買うと、景品として薄い本をくれます。毎年違う作家がその景品の本の担当をしています。2008年にベルンレフがこの担当となり、書き下ろした作品です。90ページくらいの短い作品で、本棚の片隅にずっとあったのですが、先日『CC een correspondentie』を読んだこともあって思い出し、読み始めたしだいです。
詳細は忘れましたが、数年前、フランスかどこかの海岸沿いでピアノがとても上手な身元のわからない謎の男が保護されたというニュースが流れました。なかなかこの男の身元がわからず、数日ニュースになっていました。このことにベルンレフはインスパイアされ、この物語を書いたとのことです。
主人公は、オランダの北部の田舎町に住むトーマス。子どもの頃から、無口な両親のもとで育ち、しゃべるのが苦手です。会話のない静かな環境が心地よいと感じています。義務教育を終え、自転車工場で働きはじめますが、ある日突然、外の世界を見てみようと、家を出ます。アムステルダムから、パリ、そしてイギリスへ。
私自身、しゃべるのは苦手とは思いませんが、あまりぺらぺらはしゃべらないほう。どちらかというと静かなほうが好き。ずっと沈黙が続いても、そのほうが楽って思うときも多いです。だからか、この主人公の気持ちにすごく共感ができました。
また、トーマスが初めて行った外国の都市がパリ。私も実は、初めて行った外国の都市がパリ。読んでいて、言葉の通じぬ国にポンと降り立ったときの風景の感じ方を思い出しました。
最後のほうで、「話すと、自分が軽くなる」という言葉が出てきますが、そうだと思います。私はあまりあれこれ話すほうではないですが、嫌なことなどあったとき、今日こんなことがあったと話すことで、自分にまとわりついていたその嫌なことがふわっと消えていく気がするときがあります。
軽く読めて、気持ちの良い本です。ベルンレフは、真摯な感じのする、オランダの文学的な良い作家だと思います。
体調は良好。週末の不調からはすっかり回復しました。