Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 53

2020-10-16 10:02:29 | 日記
 思わずゾ―ッとした。きっと私の顔も青ざめていた事だろう。すかさず寝室に戻ろうとした私の足は、竦んで動けなくなっていた。

 困ったと思ったが、身動きできないのだから致し方ない。そこで私は眼下の異様な物の中に、少しでも何かしら平常な部分を見つけようとした。もしそれが見つかれば、この世の中に妖怪やお化け等そういった類の物はやはりいないのだ、こう私は胸を張って言えるのだと思った。

 私は暗がりをしげしげと覗き込んだ。階段の左右の端々に迄目を注いだ。すると、私の足元左側の少し下、階段端に有る手摺の部分にぽうっと浮いた様に白みの有る事に気付いた。何だろう?。私はそれに注意を向けて食い入るように見つめた。すると、それは益々白さを増して行き、私の視界がはっきりとその物質を捉えて見ると、それは1つの白い手となった。『手だ!。』私はハッとした。

 白い手は人の手だ、ごつごつとしているようだ、手摺を掴んでいる様子だがやや長く見える。

『祖母の手かしら?。』

うそら寒く思いながら私は思ったが、直ぐに彼女の手にしては大きい様だと感じた。私は再び祖母の様子を観察すべく、彼女の頭のある方向に目を移した。

 彼女はやはりまだ頭と髷の部分しかこちらに向けていなかった。そこで私は自分の目が届く範囲で彼女の体の全体像を探ってみた。すると、祖母の頭の大きさや、彼女の今いる位置、下を向いている彼女の体の向きから、私から見て階段左に有る、今手摺を掴んでいる手は全く彼女の手では無い事が判断出来た。あれが祖母の手なら、彼女は相当長い手をしている事になるし、肘の部分で通常の人とは反対の方向、腕を肘の外側にぐにっと折り曲げている事になる。第一彼女の手にしては厳つくて大きすぎる。再度確認と手摺の手を眺めると、その手は益々白さを増した。青白くさえ見えて来る。「鬼の手、…般若の手?。」先程の祖父の言葉が蘇って来る。私の内心の恐怖や気味悪さはいや増した。思わず竦んでいた私の足から力が抜けた。

 カクン!。私は後ろによろめいた。私は倒れ込まない様に足を動かしたので、体が2、3歩後退した。『動ける!』、私はハッとして気付いた。体が動けるならしめた物だと思った。私は寝室方向へ向きを変えると一目散、後ろも見ないでぱたぱたと寝室に向けて駆け出した。急いで足を運んだのだ。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-10-16 09:49:44 | 日記

うの華 78

 父は父の実家を出るかどうか、新たに仕事を見つけるかどうかで悩む事になったのだが、結論を言うとこの家の長男の一郎さんはこの時戻って来なかった。彼が世にいう転勤族であった為だ。しかも......

 今日はとても良いお天気です。快晴です。日差しが眩しいです。
 昨日の事、ウエブ講座が有る事を忘れて、ほぼ1日買い物に出ていました。冬に備えて、除菌、防菌の衛生用品。年末に向けての掃除用品等買ってきました。
 さて、購入目的の商品棚が分からない場合、あちらこちらと物色する内に、目についた品物も買ってしまうという弊害が有ります。夏の残りの特売品、こうなると来年の夏に向けての準備です(鬼が笑うという物です)。特売になるだけに人気のない商品なんでしょうが、興味が出たので購入、こちらは正月向け(はや新春)。
 外に出ると出費がかさむと苦笑い。困った物です。私などよい消費者ですね、今後国民一律の、給付金の追加が有るでしょうか?。無事年を越して、好い年を迎えたいですね。(早々)

うの華3 52

2020-10-14 10:35:31 | 日記
 私は一層耳に神経を集中させると、階段の入り口の方を見詰めた。未だ座ったままだったが膝を崩すと、声の方向に向かって倒れる様に自分の体を伸ばしてみるのだった。

「ミーちゃん、ミーちゃん、」

なかないでミーちゃん。こう祖父の言っている言葉がはっきりと聞き取れると、『猫だ!』、私は思った。猫のミーちゃんだ!。

 私の外出時の事、時折だが、大人達がこの界隈をうろついている猫を見ると、大抵そういう猫は野良なのだが、ミーちゃん、よしよし等声を掛けている。そうやって猫を呼ぶと、皆屈みこんでは彼等の頭など撫でているのだ。

 可愛い…、そうだ!、きっと子猫なのだ!。階段では祖父が子猫をあやしているのだ。子猫はきっとみぃみぃと鳴いているのだ。私は目を輝かせた。動物が大好きな私は、さっと立ち上がるとぱたぱたと階段へ急いだ。そうして胸をときめかせて、階下への入り口から階段を覗き込むと足下を眺めた。真っ暗だ。

 靄の様な底知れぬ闇が、煤けた様に私の眼下に広がっていた。お陰で私は全く要領を得なかった。それでも私は可愛い子猫見たさに靄の細かな粒の最中に目を凝らしてみた。すると、私の目に見慣れた祖母の頭、未だ黒髪が多い髪の毛の筋、彼女の頭に丸く結った髷が映って来た。そうだ、祖母の髪は未だ黒い髪の方が多かった。近所のお祖母ちゃんと呼ばれる婦人達の頭を思い起こして、私はこの時ふとそんな事を思った。きっと、家のお祖母ちゃんはまだ若いのだ。そう感じると、私は何だか無性に嬉しい気がした。

 「お祖母ちゃん。」

私は反射的にそう声を掛けたが、直ぐに怪訝に感じた。『お祖父ちゃんじゃない。』、声は祖父の物だったのに、階段には祖母がいるのだ。私が不思議に思い、益々目を凝らして祖母を見詰めると、段々と階下の靄が晴れるに連れて、彼女の体に異変が有る事を私は感じ取った。

 彼女はとても太って見えたのだ。頭は普段通りの大きさなのに、彼女の胴体、首から下の部分が何時もの2倍はあろうかという大きさに暗く膨れているのだ。周囲の暗さも手伝って、私は背筋に寒い物を覚えた。

 階段、ここは階段なのだ。「階段で怪談を見るとは」、一時前の意味有り気な祖父の言葉が蘇って来ると、私の背筋の寒気はそれを凍らせる程になった。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-10-13 11:14:09 | 日記

うの華 75

 「父と息子でこの違い。」そう父は茶化したように言って、その実、内心の不満をちらりと覗かせているのが私にも分かった。 その日の夕餉は明るく賑やかだった。祖母も明るい表情で笑......

 今朝は小雨に曇り空という感じでしたが、青空が出て晴れて来ました。風も涼しく過ごしやすい気候です。
 昨日、母の予防接種の問診票を母の所へ郵送しに出かけ、ついでに買い物も有ったので帰りにお店に寄って来ました。
 お店の前の検温計では36.3度、体調は大丈夫みたいだとほっとして、少し見て回る内に熱っぽくなり、やはり風邪かなと早めに帰宅しました。
 今風邪が流行っているんでしょうか?、暑くなったり寒くなったり、気温に差が有る時期ですからね。体調不調を起こしやすい時期なのかなと、今日も家でのんびりしています。

うの華3 51

2020-10-13 10:12:21 | 日記
 何だか様子が変だ。お祖母ちゃんは怒って下へ行ってしまったんじゃないのかな?。祖母の降りる気配や、留まる気配、誰か不明の話し声や、ハッキリとした祖母の声等、何やら階段で立ち往生している誰とも分からない人の気配を先程から感じていたが、私はまた父の机の前に座すと、机上の国語辞典を開き、再度挑戦と眺め出していた。

 祖母の言葉もあり、目の前の本が子供には難しくて読めない本という、自身には不可能な物だと知ると、私の焦る気持ちは落ち着いて来た。どうせ読めないのだからと、じっくり落ち着いて文字を眺めて見る。すると不思議な事に1つ2つと見知った平仮名が見えて来た。他は全く読めないが、文字の集合体の中に分かる文字を2個発見した事で、私は嬉しさが増してくる気がした。こんな本、嫌いだとさえ思っていたのだが、大人の本と言っても何だか子供の私でも好きになりそうな本だと悦に入り始めた。

 どいてください!。そう祖母の声が大きく聞こえた気がして、私は階段の方向を見やった。何だろうか、祖母は下へ行って、たぶん父がいるだろう台所まで行ってしまったんじゃないのだろうか?。彼女は私の父に用が有る気配でこの場を去り階段に向かったのだと私は察していたのだが、あの声ではまだ彼女は階段上にいる様子だ。私は思った。先程の私の判断が間違っていたのだろうか、私は自分の洞察力の無さにがっかりした。

『てっきり、お祖母ちゃんはお父さんの所へ行ったと思っていたのに…。』

そして、父は祖母に、多分、叱られていると思っていたのに。私は溜息を吐いた。それにしても、未だ祖母があの場所にいるなんて…。何時も敏捷な彼女の事だ、私は停滞しているらしい彼女の行動を不思議に思った。

 さっきも誰かの声と、誰か話をしているらしい声がしたけれどと、私は階段に何人の人がいるのだろうかと不審に思った。それでも、私はその場を立って行くという事をせずに、やや躊躇したが、集中し始めていた目の前の辞書に気持ちを戻した。再び眺めてみたが、2つ以上の平仮名以外、私の見知った文字は見つから無かった。やはり無理か、興ざめしてほうっと息を吐くと、しーんとした静けさが身に迫って来る。2階に1人なのだ。そう思うと孤独感が嫌増して来る。

 待てよ、確かに静かだが、私は気配を感じた。階段の途中、私からは見えない場所から、何やら私には理解できないながらも何かの気配が漂って来る気がするのだ。私はその場所に向けて耳を澄ませてみるが、ことりとも物音はしない。すると、小さな声で「ミ…」という声がした。その声は再びミー、ミーちゃん。と言う。

『お祖父ちゃんだ。』

私は思った。

 可愛い、よしよし等、それは私の祖父の声だった。お祖父ちゃん、具合が悪かったんじゃないのかな?、私は怪訝に思ったが、彼の声と場所を推察すると、祖父が段上にいるのは間違いない様だ。では、お祖母ちゃんはやはり今は台所に達しているのだろうと私は判断した。階段に人が2人もいる姿などかつてこれ迄私は見た事も無いのだから。