Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 50

2020-10-12 10:26:13 | 日記
 夫婦2人して見つめ合い仲良く微笑んだ所で、それはそれとしてと、妻の方は階下へ向かいたい意向を夫から優先させようとした。あなた一寸どいて下さいと言うと、下へ行かせて下さいと重ねて申し出た。

 「お前、よしなさい。」

夫はやはり妻を窘めた。もういいじゃないか、子供達も大きくなったんだし、今更あんな字引など、必要ないだろう。と言うと、妻の方は、お父さんと、あれは特別な物なんです。この辺ではなかなか買えないような良い品なんですよ。言葉の意味だけじゃ無く、類義語や反語も載っているんです。お陰で私はどれだけ重宝したか。私の人生でもとても大切な物なんです。私の第二の宝と言ってもいいくらいの物なんですよ。と、夫に訴えた。
 
 第二の宝とは、これはまた大きく出たね。夫は何やら頬を染めたが、あれがお前さんにとってそんなに大切な物だとは、それは悪い事をしたねぇと、今迄とは打って変わってにこにこと自分の女房に詫びた。知らなかったんだよ、お前にとってそんなに大切な物だとは…。彼はちょっと悪びれると反省した様子で潮垂れた風情になった。

 こうなると妻の方も、用があった息子より自分の連れ合いの方へ注意が向いた様子だ。そんな、悪いだなんて…、そう気に病まれることも無いですよ、お父さんと、自身の感情的になった状態を反省した。

 階段の暗がりで頭が冷えた彼女は、そうですねと、お父さんの言われる通り、今更あんな字引の書等、老い先短い私には無用の長物ですよ。と、妙に静かでしおらしい声を発した。

 とまれこうまれ、階段で長く連れ添った鎹の夫婦が、あれやこれやとやり取りを重ねる内に段上は静かになった。みしりとも板の軋る音はしなくなった。

 変だなぁと、彼等夫婦の息子の、文机の前に正座した儘で彼等の孫は思った。

『階段では何が起こっているんだろう?。』
 

今日の思い出を振り返ってみる

2020-10-12 10:13:43 | 日記

うの華 74

 「お前あの時妙な笑い方したなぁと思ったんだ。」それでかと言いながら、父は縁側にいる私の所へとやって来た。 その日私は変な夢を見る事無く朝の目覚めを迎えホッとしていた。機嫌......

 今朝は曇天ですが、青い空が見えます。明るい曇り空に日差しも差している、晴れて来そうな現在です。午後からは雨の予報もあったんですが、暑からず寒からずの良い天候です。
 さて、先週末の私は、冷蔵庫にあった今年の梅ジャムの残りを使い切り、パウンドケーキを焼きました。時々冷蔵庫の中を整理して、古い物は使い切るようにしています。ワックス掛けしたのも先週でした。お陰で週末、土日とよく眠りました。疲れが出たようです。怠かったり、眠かったり、暑かったりと、一時風邪を引いたかと思いました。衣類も衣替えして長袖でしたから、半袖やランニングに変えてホッと一息つけました。今朝になると、やはり疲れが出たのだと実感しています。 

うの華3 49

2020-10-08 10:53:19 | 日記
 お前血相を変えて、何処へ行くんだい。夫は慌てた様に尋ねた。何処って、妻は言い淀んだ。

「一寸気になる事が有りましてね。」

落ちついた声だったが、夫はそれとなく思い当たって妻を引き止めた。

「一寸じゃ無いんだろう。」

 流石に夫は長く連れ添った妻の性格を把握していた。このまま彼女を行かせると家内で揉め事が持ち上がると察していた。そこで一言「止めなさい」と妻を輸した。妻の方は、でも…と悪びれた雰囲気でやや口を尖らせたが、その場に留まり、俯くと上目で夫をちらりと見て黙った。妻の方も、こんな風に夫が自分を制する状態に慣れていた。彼女はジロジロと夫の顔色を窺い、その後ろめたそうな雰囲気を彼の背後に嗅ぎ付けると、

「お父さん、何かなさりましたね。」

と、半ば断定的に尋ねてみた。夫はにまりと照れくさそうな笑いをその顔に浮かべた。いやぁ…と、曖昧な言葉を発する彼に、ははぁんと妻は内心合点した。

 やはり、夫はあの辞書の事で何かしでかしたのだ。だからあれが四郎の所に移動したのだ。成程と彼女は頷くと余裕の笑みを浮かべた。

「何処か破かれたんですか?。」

そう言って彼女は、まぁ、あれも私同様古くなりましたからね、さぞやぞんざいに扱われたんでしょうね。と、声音はいかにも穏やかで優しい妻に、夫は赤面すると、ち、違うよと、狼狽え気味に答えた。

 それから、彼は妻の様子を控えめに眺めて、少々考える気配で間を置くと

「まぁ、確かに端の方に皺を寄せたり、折り目など付けた場所もあるがな。」

と、小さく言った。それも随分昔のことだよ。ほれ、お前に謝った時が有っただろう。あの時だけだよ。あれも、随分お前が目くじらを立てて怒ったものだから、それ以降は十二分に気を使って、お前同様大切にあの辞書は扱って来たものさ。

「それはお前も知っているんだろう。」

夫が微笑んでそう言うと、妻もほのぼのと微笑んで、分かっていますよ、お父さんを一寸揶揄っただけですよ。と答えるのだった。

うの華3 48

2020-10-08 10:16:57 | 日記
 暗転。所謂場面変わってこちらは階段である。2階から矍鑠として降りて来る妻を、これまた長く連れ添った夫が階段で待っていた。

 彼は腰を痛めていたが、出来るだけ背筋を伸ばし、階段の踏み板の端々に長く身を寄せる様にして手すりに摑まると、上を見上げ、その耳を澄まし、今迄繰り広げられていた彼の妻が主演する階上の出来事に聞き耳を立てていた。そしてその儘の姿勢でいる所へ彼の妻が降り口に現れるのを迎えた。

 妻の方は頭にかっかと血が上っていたのと、彼女の目が今踏み入れる母屋の暗がりに慣れていなかったのとで、下を覗き込んでも全くそこにいる自分の夫に気付かない。彼女は唯階段を下りるという行為に対して注意していたので、眼下に忽然と開いた闇の中に闇雲に足を踏み入れるという事をしなかった。しかし目が利かないと言っても長年慣れた階段だと思うと、彼女は目が慣れるのを待つ事無く、云と思い切りよく、自分の勘を頼りにしてとんとんと階段を降り始めた。彼女の息子に向けて、それだけ彼女は気が急いていたのだ。

 と、おいおいという聞き慣れた足元近くの声と、そこに何やら声の主の体の一部の感触を足先に感じて、どきりとして彼女は動きを止めた。彼女は尻に当たる板に腰かけるとよくよく目を凝らして暗がりを覗き込んだ。自身の目が慣れてみると、彼女の足先、足の裏が、自分の夫の歳を重ねてかなり薄くなって来た頭を踏んでいるという事に気付いた。あらまぁ、

「お父さん!。」

これはしたりと妻は恥じらった。

 「お父さんでしたか、そんな所に。」

寝ておられなくてよかったんですか。妻が尋ねると夫は2階の事が気になって起きて来たのだと言った。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-10-08 09:52:10 | 日記

うの華 70

 母が実家に帰るという一件があってから、その時、私が母の後追いをするという事態が全く起こらなかった事から、母の里でも母と私の現状を問題に思ったのだろう。今後の母のこの家での立場を考......

 今日は雨。1日雨模様の予報です。本当に涼しくなりました。昨日は廊下のワックス掛けをして、これが実に1年以上ぶりです、昨春塗った切ですから。それで2回塗りした方が良いかなと考えてしまいます。
 昨年は夏から歯の治療他あれこれとあり、年内ワックス掛けをする元気が出ませんでした。大掃除をする元気も無く、粗々とお座なりの掃除でした。本格的な大掃除は来春にでもと、考えて先送り、そうして迎えた新年から春にかけて、新型コロナの騒ぎに気を取られ、自身も未だ体調が整わず、ワックス掛けなんて及びも付かず、到頭夏に。盛夏は暑さでぐったりと動けず、今や秋という現在に至った訳です。
 詰まる所、床に設置されている色々な物を動かす元気が私に出なかった訳です。昨日も廊下の一部を1回塗って、今日は残りの部分と2部屋分、その他。他にもワックス掛けしたい部分が有ります。1人では動かせない家具が有り、如何移動したらよいかと考えるインテリアや備品、etc.。
 今日ものんびりとですね。先ず片付けと掃除から。