Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

毎年の事ですが

2024-11-17 10:43:49 | 日記
 今年も夏バテしました。毎年同じ事を言っています。それが9月、10月、そして11月に入っても言っていたのですから、今年は相当な物でした。そんな中、今年も後50日と聞いて、本当に信じられ無いくらいでした。その後、日本が四季から二季に変わるという話を聞いて、成る程ね、それでは夏の直ぐ後に冬なのだと納得した物です。季節が変化する間に少しの春と秋の様な時期が有るそうですが、正にそんな感じのここ2年と思いました。もう少し前からそうだったのかも知れませんが、私がこの事を感じたのは昨年今年の2年でした。…卯辰巳と、干支を思ったりします。
 さて、来年は巳年だなと思うと感慨深いです。1年を振り返ると、結構運気の良い年であった様に思います。昨年、卯年に母の不幸が有り、喪に服していた1年。その1年が明けて、今年の春の我が家、私は、活気に溢れていました。気分もウキウキと上り調子でしたね。上り気分の中で、上り下がり上り下がり、誠に空に形を映す龍の肢体のごとく、高低の波を感じる環境変化でした。もう年の瀬かと思うと、今年の辰年が名残惜しいです。来年は巳年かぁ、来年は何が有るのだろうか?、と、不安に思ったり、案外と沈みがちな気分になってしまいます。這い這いと、地に近いですからね。そうね、木にも登りますかね。空を飛ぶ種もいましたね。


うの華 番外編10

2024-11-14 11:46:51 | 日記
 さて、史は礫の探索を思い出した。そうそう、念の為と智ちゃんに聞いていたんだった。史は話を礫に戻した。

 「それでさ、礫っていうのは、小さな石ころみたいな奴さ。」

と、石ころでも通じない智に、史は手の指で丸く小さな形を作ってみせた。このくらいの大きさで、多分丸い…、と言い掛けて、いや、四角かった、事によると三角とか。と、曖昧に言葉を濁して行く史。話の分からない智は、そんな史に段々と焦れてくるのだった。遂に智は何の事を話しているのかと口を挟んだ。すると史はひょっと驚いて考え込んだ。そうしてみて、史は分からない者には説明するだけ無駄だと理解した。

 「さっきさ、俺の頭に何か当たっただろ。」

智はうんと頷いた。見てたかい?、史が尋ねる。うん、と智。その俺に当たった奴、何処に行ったか見てた、智ちゃん。と史が尋ねると、果たして智は見ていたと言うではないか。へへへ…。手を叩くと史は目を見開いて喜んだ。姿勢を正して智に向き直ると、礫の場所を問い質した。

 「あそこだよ。」

智が指で示す方向へと、史は智への礼の言葉も無く急いだ。『これだもの。』智は思った。史ちゃんって、案外失礼だよね。

 「有った!。」

程なくして史は智の所に戻って来た。手には鼠色の小さな石ころの様な物が握りしめられていた。手を開くと、ほらっと言って、史は智にその掌にある物を見せた。そうして何だと思う?と訊くのだ。

 「これがさっきの礫の正体だよ。」

史はニコニコしていた。疑問が解けた解放感で心が満たされていた。そうして、その正体に対する憤りで史の笑顔の目には次第にギラギラした輝きが加わって行った。智に何だと聞いてはみるが、それを知らない事は重々分かっている史だ。更に智の手にそれを取らせて触らせてみる。それでも見当がつかない様子の智に、やはりなと思い、得意げにふふんと笑うと、史は言った。

 「砂消しさ。」

これは砂消しと言うものさ、凄いなぁ、砂消しだぜ。こんな物を礫にするとは…。史にすると絶句だった。消しゴムより硬くて、石よりは柔らかい。当たって痛くても怪我はし無い。「しかも先っぽを削ってやがる。」、手の込んだ事しやがって、流石に大人の手だよなぁ、智ちゃん。子供にこうは出来無いさ。史は智の前で一頻り感心して見せていたが、先程の痛みを思い出したのだろう、キュンと眉根に皺を寄せた。が、流石は流石でも大人気ないだろう。なぁと、史は智に同意を求める様に声を掛けた。はぁ?えっ?。智が訳も分からずそう応えると、急に史は踵を返して智から離れた。史はスタスタと足速に妹娘達のいる大きな家へと向かった。今度は十分に用心して、二階の窓から礫で狙い難い位置に陣取った史だ。

 「姉さん、礫の腕前は認めるけどよ、一寸大人気ないんじゃ無いかい。」

史は言う。何も子供相手に自分の手を汚す事もあるまいよ。…何の事かって、ほれ、この砂消しに施された細工の事だよ。お前さんも、ここ迄するには結構な手間だろうによ。さてはお前さん、手でも痛めて無いかい?。こちとらでさえ、そんな心配にもなろうってもんさ。云々。

 へへー。窓辺で史の口上を聞いていた姉娘が、これはまぁと目を見開くと、すぐにその目を瞬いた。此処らの界隈は芝居好きの家が多い。さては史の一家もそうらしい、子供がこの腕前では、その家も相当近所に感化されている様だ。

 「驚いたね、その年頃の子供でここ迄口上が言えるとは…、返って見上げた物という物さね。」

彼女は思わず拍手喝采してふみを誉めた。その側で、キョトンとして遊び仲間と窓辺の姉娘を交互に見遣っり、遂には感心頻りの姉娘に見入っている童、それが智だった。

       「うの華 番外編」  終わり

うの華 番外編9

2024-11-13 10:36:27 | 日記
 史の立ち止まった場所、そこは折りしも大きな家の一階の端だった。二階の窓辺には妹娘と彼女の許嫁が外を覗き込んでいた。先程からの外の喧騒に驚き呆れながらも、二人は共に至福の笑みを湛えていた。しかし、妹娘はこの好機を逃さなかったなかった。彼女の視界、見下ろす方向には史の小さな黒い頭が映っていた。

 『これは、好機到来!。』

ニンマリと笑んだ彼女は、二階の窓辺から此処ぞとばかりに狙いを定めた。隣にいた男性は彼女の気配に気付き、一瞬困った素振りをして顔を顰めたが、彼女を制する事無く一旦部屋の中へと身を引いた。

 「覚悟しろ史!。」

そう言って、彼女は二階の窓からヒュンとばかりに礫を投げた。

 「いってぇ!。」

史は頭を抱えながら振り返り、その後状況を見極めて上を見上げた。自分が後退りしたお陰で、妹娘が立つ向かい家の二階窓から、自分迄の距離が縮んだのだ。相手に対して礫を放つよい機会を拵えてしまったのだ。そう気付いた史は地団駄踏む程に悔しがった。油断した!。「油断したよ、姉さん。」、史は上の窓に向かって負け惜しみに言い放った。

 いてて…、ちくしょう、史はぼやきながら、それでもまた遊び友達の智の側まで戻って来た。その頃には泣いていた子供も落ち着いたらしく、智は声を上げてはいなかった。実際、史に起こった出来事の一部始終を目の当たりにした智は、それ迄史に対して感じていた劣等感が一気に払拭されていた。智は口をぽかんと開け唖然とした状態でいながら、史の災難を内心小気味よく感じ始めていた。智の目にはその愉快を思う光が否応無く浮かんで来た。そうして近付いて来た史の目には、またその智のその様な状態が怪しげに映った。史は智の様子に用心して立ち止まると、ふと頭に受けた礫の事が気になり出した。史は辺りの地面をキョロキョロと探り出した。

 子供の一方は自分の前後左右の地面を見渡していた。一方の子供はそんな子供の行動を不思議に思い未だ涙を浮かべた儘の目で見詰めていた。捜索する子供はその正体を知りたいと思っていた。先程の礫の正体だ。窓辺にいる姉妹は普通消しゴムを投げてくるのだが、今の物は今迄の中で一番衝撃が大きかったのだ。石より弱く、当然分別のある大人は子供に石等投げて来ない、今迄の消しゴムよりは強い痛みだった。『何だろう?』史はその正体を知りたかった。物知りを自負する自分の知らない物がこの世に有るなんて…。そんな事が未だ有るんだなと、史は存外興味をそそられた。

 史は暫く周囲の地面の探索を続けたが、それらしい物は何も発見出来無かった。あちらこちらと当たりを付けて、探ってはみたものの、手に取る感触はどれも違った物だった。そんな史の様子を、何思う事も無く智は見ていた。史はそんな智の視線に気付くと、念の為と思い智に近付き問い掛けた。

 「智ちゃん、つぶて見なかった?。」

 「つぶて、って?。」

訊く迄も無かったなと史は思った。投げ合い等した事も無い、ましてや当たった事等皆無な智が、礫を知っている筈が無いのだ。話を変えようと史は思った。

 「ほらな、あそこの窓の姉さんが、さっき俺に向かって、何か投げただろう…。」

そんな風に話を持って行く。智ちゃんと話す時は説明が必要だと、まどろっこしさを感じる史は、智に向ける体の向きもその顔付きも、自然と斜に構えてしまうのだ。智はというと、そんな史の様子に侮蔑の感情を抱かずにはいられなかった。智も自然にその首と目を落としてしまう。智は溜息をついた。そんな智の気持ちは史にも伝わるのだ。俺だって、と史は思う。「俺だってさ、智ちゃんと遊びたい訳じゃ無えけどさ…。」、史は言い淀んだ。本当は遊びたいのだ。近所に遊べる同じ年頃の子は智だけなのだ、否、史と家の子を付き合わせてくれる家がこの近所には無いのだ。でも、こう迄露骨に馬鹿にされて迄付き合うべきかどうか、「これが正念場という物なのかもかもしれない。」、口にしながら史は思った。智にだって、近所に史以外遊べる同年代の子がい無い事は、史自身もよく知っていた。「何しろ智ちゃん箱入りだからな。」、口の聞き方に気をつけろとかさ、へん、遊ぶのに疲れる奴と、仲良く遊ぶ奴なんていないぜ、「俺くらいさ。」、そう思うと史は智から顔を背けてへへんと鼻で笑った。そんな史の様子に、智も史は相当柄の悪い子だと思った。こんな子では、自分以外に気前よくこの子と遊ぶ者はいるまい、と自賛した。子供達は共に目を細めて嘲笑し合った。

うの華 番外編8

2024-11-11 09:08:26 | 日記
 妹は姉の言葉に弾かれた様に窓辺から姿を消した。その頃には向かい家の二階の窓にも、妹の許嫁がその姿を現していた。部屋に置いてあったのだろう、彼の学生帽など被っていた。

 部屋に残された姉の目には涙が溢れてきた。希望という物は持ってみる物だと彼女は思う。自分の許嫁も直ぐに戻って来そうな気がしてくる。ジーンと心が熱くなった。

 暫くして、彼女は窓辺の小箪笥からハンカチを取り出そうと小さな引き出しを開けた。涙で曇った目でハンカチを探してみる。『おやっ?。』、彼女はそこに、自分の物では無い色柄のハンカチを認めた。これは?、確か妹のものじゃ無いかしら。時折、妹が自分の部屋の文箱から取り出しては眺めていた物だ。何故自分の小箪笥に?、『何時の間にこんな物が紛れ込んだだのかしら?。』彼女は不思議に思った。
 
 つーと、涙が頬を伝わる感触で我に返った。彼女は妹のハンカチを自分の傍の小箪笥の上にそっと置くと、引き出し中から適当なハンカチを選び、それを取り出して目頭と頬を拭った。それから自分の両目に静々とハンカチを押し当てて、深々と感慨に浸った。

 「お涙頂戴じゃねえかよ。」

こちとらまで泣けてくるぜ。外の道では史が片袖で目を拭いながら言った。子供にもこの状況が分かるとみえる。が、同じ子供でも智は違っていた。先程からの遊び仲間の史と、この姉妹の遣り取り、彼等三人の会話の中で通り交わされた言葉の数々、それ等の意味、内容が、この子供にはサッパリ理解出来無かったのだ。智は史に対する劣等感と、彼等からの疎外感で、心中言いようの無い圧迫感を感じていた。自分では如何仕様も無い人生経験や知識の乏しさ、そこから来る不可抗力に、智はこの場にドンと押し潰される寸前だった。

 姉妹の妹は、今や向かい家の二階に到達した様だ。ドタドタと足音の響く音、窓の奥からは男女二人の歓喜の声が響き渡って来る。

 「まるで芝居じゃないか。ロマンスの場面がそのまんまだな。」

大きな家の二階を見上げて、史はそう言うと、笑顔で振り返って遊び仲間の智を見た。が、もう一方の子供は酷く顔を曇らせて顰めっ面をして立ち竦んでいた。史にはこの目出度い場にそぐわない智の顔付きと様子が意外だった。そこで、目をパチクリとさせて連れの子の智の様子を覗った。

 ははぁん、史は思った。

 「姉さん、智に何かしただろう。」

窓辺の姉はあらぬ疑いを史に掛けられて、一瞬キョトンとした。もうハンカチを目から離していた彼女だが、外の子供の一方が、自分に何を言ってくるのかと彼女は不思議そうな顔をした。『何の事やら?。』彼女は戸惑った。

 「手に何か持ってるんじゃないのか?。」

史は言う。「それを智ちゃんに投げただろう。」確信した様な口振りだ。さっきの姉妹の様子から、そういった事が起こったと容易に推察出来る事を、史は道から姉娘に捲し立てた。分かっているんだからな、と、姉娘を指差した。

 「わぁーん!」

史の傍で身動き出来ずに佇んでいた子供が、急に顔を紅潮させて大声で泣き出した。わーん、ーわぁーん。一頻り大声を張り上げ、後にはえっ、えっと嗚咽混じりの泣き声を発している。「皆んなで、皆んなで、自分を虐めるー。」漸くの事にそれだけ口にすると、子供は再び泣きじゃくるのだ。これには世慣れた子供を自負する史にもお手上げ状態となった。史は訳が分からず智を眺め続けた。それでも流石に目の前の子供が奇妙に見え始めると、一旦この泣いている子供から逃れようと決断し、史は智を見詰めた儘で一歩、二歩と後退りした。数歩引いた史はそこで向きを変えると一散に駆け出し、智からそれ相応の距離を置いた場所で立ち止まった。史はまた振り返って智の様子を覗った。

うの華 番外編7

2024-11-01 10:06:32 | 日記
 「もうその辺にしたら如何です。」

子供相手に少々大人気ないでしょう。若そうな男の人の声だった。姉妹達は怪訝に思った。声のした家は長く空き家で、誰も住んでいなかったのだ。一瞬通りはシンとした。が、余計な口を挟むなと、姉も参入。更に姉妹は鼻息も荒くなり、向かいの窓の奥にいるらしい人物に代わる代わるに苦言を呈した。引っ越して来たらしい新参者に、あなたにこの近所の子等の事は分からないと突っぱねた。

 「そうでしょうか、私だからこそ分かります。」

彼は姉妹に応じた。この近所の子だけで無く、貴方達姉妹の事も、私はよく存じておりますよと男性はにべも無い。姉妹は妙に感じたが、悪ガキを庇護する態度のこの男性の様子が気に食わない。顔も見せずに何様だと詰ると、彼女等の矛先は、向かいの家の二階の窓の奥、姿を見せない男性に向かった。すると、一階の開き窓が大きく開いて、姉妹の兄が姿を見せた。

 「二人共いい加減に止めませんか。声を聞いて彼が誰か分からないの?。」

兄は妹達に言葉を掛けた。彼の声には愉快そうなニュアンスが含まれていた。「この家もそうだし、この家から声を出す男の人といえば、…。」と、彼はクイズの様な言葉を妹達に投げ掛けた。「二階にいる男性は誰でしょう?。」。

 姉はハッとした。住む人もなく長らく空き家になってはいたけれど、大きなお屋敷ともいえる趣を兼ね備えた家だ。そこにはかつての職業軍人、その家柄を代々引き継いで来たという、この土地でも有数の士族一家が住んでいた家だった。それも今は昔、跡取りが戦死し、男系の家系が悉く絶えると、残された一家は離散して移り住み、今は売りに出されて久しくなっていた。

『もしや、…そうかも。」

姉は思い出した。町内の余興で金色夜叉のお芝居をした時に、この家の跡取り息子と貫一お宮で共演した時の事を。『あの声、そうだ、澄ました青年風に気取ってやると、あの人は笑ってそう言って演じていた。』そうだ、あの声だ。姉は懐かしそうに遠くを見つめ、そして直ぐに嬉しそうに目を輝かせた。『あの人は、帰ってきたんだ。』。

 出征してから無事の帰還を待ち焦がれて、遂に彼が戦死したと通知が来たと聞いて悲嘆に暮れ、彼の家族が去り、ひっそりとした目の前の家を虚に眺め、もう今はと諦め掛けて、巷で戦死の通知が来ても、生還してくる人が何人か有ったと聞くに及ぶと、自分の彼ももしかしたらと希望を持ち、それでも現在になると戦後十五年以上が経つからと、彼のことはキッパリ諦め、自分の未来に希望を繋ごうと思い立った矢先の事だ。

 「彼は帰ってきたんだ。あの声は彼の声だよ。」

お向かえのお兄ちゃん。と、姉は妹の服の裾を引いた。確かにあの声だ、確かに彼だよ。姉の心には感無量の喜びが湧き上がった。「早く、早く向かいの家に…。」姉は妹を急き立てた。「お前の許嫁は帰ってきたんだよ。」