本日の朝日新聞朝刊に、息子の新刊の広告が出ていました。
『幽霊屋敷の文化史』(講談社現代新書)です。
まずは、「はじめに」からの抜粋を書いてみます。
「この不思議な魅力に満ちた幽霊屋敷について知るのは、まずその外観やインテリアに濃密に漂う妖しげな雰囲気について理解しなければなるまい。そもそもディズニーランドという、明るく清潔な夢の国のなかで、ホーンテッド・マンションという幽霊屋敷は本質的に異質なものとはいえまいか。だが、それにもかかわらずホーンテッド・マンションはディズニーランドというおとぎの国のなかで、誰もが求める要素でもあるように思われるのである。それはなぜなのか。ここまで考えたとき、もはや、たんなるトリックの説明だけですますわけにはいかないことをおわかりいただけるだろう。・・・」
大学の研究者である、息子の専門は建築史です。
しかし私の知る限りにおいて彼は、小学生のころから膨大な本を読む子どもでした。
それは小学校の図書館・司書の先生のおかげという側面も大きかったような気がしますが。
とにかくその読書遍歴たるや、ミステリーからファンタジー、ありとあらゆる領域にひろがっていきました。
小・中・高と授業中にはいつも、教科書の下に本を入れて読んでいたというのは彼の友人たちが語る有名なエピソードです。
そして大学生になったころには古本屋さんで時間をつぶすのが習慣になっていました。そのころから彼の書棚にはお気に入りの本に紛れて『ユリイカ』や幻想文学や澁澤達彦の本など、この本にでてくる幻想文学が並び始めたのです。
今回この『幽霊屋敷の文化史』を読んでいて思ったのは、彼が人生をともに歩く『専門」(建築史)の、ゴシックという視点は、子どもの頃からの読書遍歴の流れのなかに原点があったのだということを、あらためて感じさせてくれました。
とにかくおもしろかったです。
我が息子ながら、その文章の上手さに感心しました。
日ごろ考えている、私感で、彼の特徴をひとことでいうなら、「独自の発見を見つけ出す力」といったところでしょうか。
とにかく、博士論文でも、あるいは2004年に日本建築学会賞の奨励賞(新人賞)を受賞した「ラン大聖堂」の柱の発見にしても、すべて彼の観察から生まれた新しい発見でした。
今回は、この発見がホーンテッド・マンションのトリックのあたりにいかんなく発揮されています。
専門性を入れつつ、一般のひとでも読みやすいとてもおもしろい本です。
ぜひお読みいただければと思います。