松本侑子訳 『赤毛のアン』 最終章第37章 「死という命の刈りとり」 はアン
の義父・マシューが突然の死によってアンから切り離される場面からはじまり
ます。
その晩アンは一緒に過ごそうという親友の申し出を断ります。
≪ 一人になれば涙がこみ上げるのではないかと、アンは願っていた。アンが
心から愛していたマシュー、あんなにも優しくしてくれたマシューが死んだという
のに、一滴も涙が出ないとは、おぞましいような気がした。最後となったゆうべ、
肩を並べて歩いたマシューが、今は、ほの暗い下の部屋で、額に死の平穏を浮か
べて横たわっているのだ。≫
そして疲れ果てた体と心は眠りに落ち込みます。
≪ 夜ふけ、アンはふと、目が覚めた。あたりは静まりかえり、真っ暗だった。する
と、今日一日の出来事が、悲しみの波となって一挙に押しよせてきた。昨夜、木
戸のところで別れぎわに、アンに微笑んでくれたマシューの笑顔が、目にありあり
と浮かんできた。「わしの娘だ。わしの自慢の娘だよ」と言ってくれた声も、耳によ
みがえってきた。そのとたんに、涙があふれ、アンは胸が張り裂けんばかりに泣い
た。≫
こんなにも深い結びつきは、ひとりの婦人の思い違いが切っ掛けです。
マシューと妹のマリラは働き手として男の子を引き取るつもりでした。ところが
やってきたのは赤毛の女の子でした。
そのことを生前マシューはこんな風につぶやきます。
≪「(略) あの子は賢くて、きれいだ。それに、愛情深い子だ。これがなによりいい
ことだ。神様があの子をわしらに授けて下さったんだな。スペンサー夫人も、まった
く運のいい手違いをしてくれたものだ。もっとも、これが単なる運の話ならばだがな。
しかし、これは運の善し悪しなんてものじゃない、神様の思召しだ。思うに、全能の
神は、わしらにあの子が必要だとご覧になったんだよ」≫
読んでいて心に残った頁です。Aさんの突然の訃報と「てんがらもんラジオ」で何時
か http://www2.synapse.ne.jp/tengaramon/ で紹介されている「会」の方
のお話をききたいという思いと重なり、メモ的にここに書いておきます。