kaeruのつぶやき

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句集『ひとり』

2018-03-28 14:11:29 | kaeruの五七五

今朝、妻が広げた「しんぶん赤旗」を指差して「これ」と言います、これです、

瀬戸内寂聴さんが俳句を詠んでいたとは知りませんでした、当然この句集もこれではじめて知ってのです。

以下一文内容、(ふりがな略)

【 第6回星野立子賞が瀬戸内寂聴氏の句集『ひとり』に決定した。

星野立子賞は俳壇史における立子の功績を顕彰し、女性の出版した句集のみを対象に授与される。選考委員は宮坂静生、黒田杏子、西村和子、小澤實、星野椿氏。

星野立子は高浜虚子の次女。昭和5年に初の女性主宰誌『玉藻』を創刊し、女性俳句の隆盛に尽力した。「ままごとの飯もおさいも土筆かな」「大仏の冬日は山へ移りけり」など、天性の伸びやかさをもつ立子の句は今なお多くの人に愛されている。

受賞作『ひとり』は瀬戸内氏が95歳で刊行した初の句集。瀬戸内氏というと京都嵯峨野の「寂庵」の庵主で、『源氏物語』の現代語訳や小説家としての顔が広く知られているが、俳句作家としての顔を持っていることをこの句集刊行まで知らなかった。

「過ぎ来し九十五年の人生が十七音になって詠まれた時、慟哭にも似た感動を皆が共有したのであった。躍り出る春水の如く温かく柔らかく、そして人々を包み込んでゆく魅力があった」と星野椿氏は選評する。氏は立子の長女。

〈生ぜしも死するもひとり柚子湯かな〉の人生観は一遍上人の言葉、「生ぜしもひとりなり、死するもひとりなり」を受けているとのことだが、観念的になるのを「柚子湯」が避け、「ひとり」の命を慈しむ。〈はるさめかなみだかあてなにじみをり〉の繊細な心。〈子を捨てしわれに母の日喪のごとく〉には、たった十七文音の中に作者の来し方が見えてきて、胸を打たれる。

掉尾の一句は〈御山のひとりに深き花の闇〉。「御山」とはかつて住職を務めた岩手県の天台寺のこと。山の闇、しかも桜の咲く闇と対峙しながら、作者はひとり、その闇の中に何を見つめていたのだろう。

「花の闇」とは、女性として聖俗を生き抜いてきた氏の人生そのものであるように思えてならない。

(日下部 由季・俳人)