永井路子
石母田正
不破哲三
永井路子『つわものの賦』「あとがき」より
それは外からの力に突き動かされての変革ではない。内部の盛上りが必然的に一つの道を選ばせたのだ。
石母田正『中世的世界の形成』
わが国における中世の成立過程は、欧州におけるが如く民族移動や征服関係などの外部的事情によって乱されなかったために、より純粋な過程を呈示していると考えられる。^
不破哲三『講座「家族、私有財産および国家の起源」入門』
古代から現代にいたる社会や国家のこうした交替や変革が、日本列島という画然と区分された領域のうえで、日本人という同一の民族的集団によって、他民族による征服や民族大移動といった事態を一度もへることなしに、なによりも社会自体に内在する矛盾とその発展を原動力として、進展してきました。
永井路子の筆は、作家として人間の動きを通して時代の特徴をえぐり、鎌倉時代の到来と発展を日本という列島社会の内部のエネルギーの変動発展の結晶として捉えています。
唯物史観を歴史観の基礎に置いて中世を詳細に分析した歴史学者石母田正の中世史観が、この一文に収められています。一昨日ある書店の古本の棚にあった一冊50円のなかに、偶然目に入った一文です。なおこの著書が戦中の仕事であることを知り、社会科学者としの戦闘性に頭が下がります。
不破哲三『講座〜入門』は中世史にとどまらず、日本列島社会は「内在する矛盾とその発展を」原動力として発展してきた「世界史の中でも〝例外的〟な存在だと」位置づけています。
今後「鎌倉殿の13人」は、日本社会の封建制への移行を示す武士社会の誕生・鎌倉時代へと三谷幸喜の筆を借り、一時代を画す革命戦争「承久の乱」に向けて画像鮮やかに展開されるでしょう。