第54期新人王戦の「つぶやき」は今回で〆に、ということで「しんぶん赤旗」の「ひと」欄を、
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1勝1敗で迎えた第54期新人王戦決勝三番勝負第3局。最終盤、相手の藤本渚四段勝ちの局面となり、上野さんは負けを覚悟します。ところが、藤本四段が「勝ちを意識したとたん、心が乱れて」、詰みを逃します。「びっくりした」上野さん、土壇場の大逆転で優勝をもぎ取りました。
「今回は運が良かった」と淡々と振り返りますが、運を呼び込んだのは、形勢が多少不利になっても引き離されない、粘り強い指し回しでした。
上野さんと藤本四段は、ともに井上慶太九段門下。「お互い手の内はわかっていますが、それはお互いさま。やりづらいというよりは、決勝の舞台でたたかえるのは、やりがいがありました」といいます。
弟弟子の方が1年早くプロ棋士・四段となり、1年遅れの10月1日付で四段に昇段しました。「藤本さんの活躍が励みになり、自分がプロになれた部分もありました」と弟弟子をたたえます。
新人王記念対局で藤井聡太八冠との対局が期待されることには、「藤井先生は本当に遠い存在。 対局できるのは光栄なこと。しっかり準備して力を出し切りたい」と語りました。
兵庫県加古川市の出身です。記者会見では、ちょうどプロ野球日本シリーズの最中であることにちなんで質問が。「阪神ファンです。将棋の研究の合間に、息抜きとして応援しています」と笑顔を見せました。
文・原田 浩一朗 写真・峯松 進