Reflections

時のかけらたち

動いている世界で ・・・ in this world, now

2016-09-02 23:57:28 | people


恵比寿の写真美術館リニューアルオープンで杉本博司「ロスト・ヒューマン」と世界報道写真展のレセプションのご案内を
いただいていて、今回は出席の場合返事を出すことになっていたがすっかり失念。封筒を持って行けば入れてもらえるとのことで
仕事から帰って夕食を作ってから夕方のレセプションに間に合うよう急いで出かけて行きました。

杉本氏の写真は難しかったが、世界報道写真展はすごかった。報道写真は写真のジャンルの一つであるが、これほど人間を
表しているものはないというか・・真実を写している。
レセプションでの副館長さんの挨拶ではこの1年で起こったことがわかる、行動する何かきっかけになればと話していました。
今回は特にシリア関係の数が多いと。主催者のお名前を覚えていないがたぶんオランダの人の英語でのスピーチも素晴らしく
45か国で展覧会を行って今回は特にミャンマーが加わり、報道の自由を、見る機会を世界の多くの人に贈ることができることを
かみしめているようだった。
子どもの幸せを奪う世界、北朝鮮の狂気の世界。動物を、人間を虐殺する世界、病気との闘い、米軍の中の女子兵士へのレイプの
数の多さに沖縄で起きることは大きな事の一部だったことを知る。目を背ける写真、深い悲しみの目の子供の写真、
やるせないものも多いが、賞を取った難民の写真には何か命のリレーを感じた。赤ちゃんを鉄条網の下から受け渡しをして
いのちの世界へつなごうとしている。ごくわずかの命の躍動や、動物のつぶらな瞳の写真もあったけど。
スピーチにもあったけれど、とにかく今世界で起きていることを考え、まずディスカッションする材料になってくれればという
思い。8万点から選ばれた写真たちである。





今回賞を取った日本人のフォトジャーナリストがいらしていて、ちょうど報道写真展を見ているときに
ギャラリートークが始まったので、お話を聞いた。チェルノブイリで胎内で被爆した女性のポートレイトと
それとつながる一連の写真の連作で彼女の生きてきた30年を映し出す。彼女は甲状腺の病気に悩まされたが
それが被曝とつながるまでかなり時間がかかったようだ。単に鬱と診断されていたとか。





鬱は甲状腺の一つの症状とか・・会いたかったもうなくなっていた友人も甲状腺の病気で鬱だったと話を聞いた。
因果関係があったのね。奇形とかそういうわかりやすいものでなくて、目に見えないものの方が深刻と小原氏。

それ以前に福島では今原発の作業員をしている人たちのポートレイトを撮っている。一人一人の命の重さを写して。
被害者が加害者のところで仕事をせざるを得なくて、そして、とても危険なことをやらされているという。
スイスの出版社からだしているが、こういう本が日本で拡散するといいのにね。政府はすごい額を投じて
どういう出版物が出ているか調べているとか。

作品の前のこじんまりしたギャラリー・トークではあまりに近かったので、気軽に何回も質問をしてしまいました。
もともと社会学を勉強していて、それまで勉強していた写真と見事に結びついて、3.11を契機にそれまでしていた仕事を
止めフォトジャーナリストとしての仕事を開始、さらにロンドンに留学してチェルノブイリへ1年滞在して写真を撮る。
チェルノブイリの30年が福島の今後の30年につながるという思いで撮り続けている。まだ本当に若い人なのですが
こういう人がヨーロッパではエンターテイメントになっているチェルノブイリをどうやって次の世代につなげて
行くかを考えている。

27日にこの連作写真のモデルの女性とワタリウムでギャラリートークをすると聞いたような気がしたが、ネットで
探してみてもみつからなかった。


ブログの紹介記事と毎日新聞の記事から

小原一真
1985年、岩手県生まれ。フォトジャーナリスト。KEYSTONE(スイスフォトエージェンシー)パートナーフォトグラファー。
宇都宮大学国際学部で産業社会学を専攻。金融機関の営業職として働く傍ら、DAYS JAPANフォトジャーナリスト学校に通う。
2011年の東日本大震災直後に会社を退職し、東北沿岸部の取材を開始。福島第一原発内部の写真を撮影した写真はヨーロッパを
中心に幅広く紹介された。その後、原発作業員のポートレートを撮影し2012年には写真集「Reset Beyond Fukushima」が
スイスのLars Muller Publisherから出版される。同時期にスイスのフォトエージェンシーKEYSTONEと契約。2014年には
太平洋戦争下で空襲の犠牲者となった子どもたちのその後を追った「silent histories」を手製写真集として自費出版。
同写真集はParis Photo First photobook Award shortlistの他、米TIME紙、英Telegraph紙、Lens Cultureなど
様々な媒体でBEST PHOTO BOOKS 2014に選ばれる。同写真集は2015年11月に普及版としてメキシコの出版社Editorial RM
より1900部出版された。

2015年1月よりLondon College of Communication MA Photojournalism and Documentary Photographyで
学びながら、ウクライナのチェルノブイリで長期プロジェクトに取り組む。ウクライナで行われたプロジェクト「Exposure」は
世界報道写真コンテスト2016の「people」カテゴリーで1位を受賞。


小林恭子+小原一真 新刊発表+トーク「ヨーロッパのメディアから見る日本メディアの異常」@スタンダードブックストア心斎橋







ひと
小原一真さん=世界報道写真コンテスト「人物」部門1位


毎日新聞2016年4月15日 東京朝刊


小原一真(おばら・かずま)さん(30)

 原子炉が爆発し大量の放射線を噴出した旧ソ連・ウクライナのチェルノブイリ原発事故から今月で30年。その直後にキエフに
生まれた女性を撮影した連作写真で、今年2月に世界報道写真コンテストの「人物」部門で1位を受賞した。


 「チェルノブイリの報道写真は膨大にある。その中で、どうすれば彼女が生きてきた年月の重みを伝えられるか」。
表現方法を模索していた昨春、立ち入り禁止区域の廃虚に放置されていたフィルムを偶然手に入れた。

 材質が劣化したそのフィルムで撮影した写真は、灰色に色あせ、甲状腺の難病による震えやめまいに苦しんできた女性の
「失われた時間」を物語る効果を生んだ。関連施設の写真やインタビューを織り交ぜた受賞作は「ストーリーを伝える新たな
手法を示した」と高い評価を受けた。

 高校時代、米軍がイラク戦争で使用した劣化ウラン弾の被害を伝えた写真に衝撃を受け、報道写真家を志した。
一度は金融機関に就職したものの、2011年の東日本大震災後に退職。東京電力福島第1原発で働く作業員を撮影した
写真集を出版した。昨年は、大阪大空襲で障害を負い、心の痛みを抱えたまま生きる女性たちの戦後を追った写真集も出した。

 「見えないものを、見たり想像したりできるものにするのが写真家の役割。そのために『伝わる』表現を常に追求したい」。
次は再び福島に戻り、被災地の子供たちを取材するつもりだ。<文と写真・坂井隆之>


 ■人物略歴

 盛岡市出身。ロンドン芸術大で学ぶ傍らチェルノブイリに通った。受賞作は、年内に国内で展示される予定。


コメント
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