庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

仕上げ撮影

2007-03-14 15:09:08 | 大空
2週間に渡って手がけてきた空撮事業が昨日の仕上げ撮影をもって全て終了した。こんな寒い季節にこんなに集中的に飛んだのは11年前の世界戦以来だ。まれに見る暖冬にも助けられた。

昨日のタンデムフライトは珍しく冷たい南西風が7mほど入っていて、テイクオフには好都合だが前へ進むのが大変だ。2回ほど小型のソロ用グライダーを使ってテイクオフしたが上昇率があまりに悪いのですぐ降ろし風が収まるのを待った。

日がかなり西に傾いた5時前、光量の関係でぎりぎりの時間になって、やっとタンデム機が使える風になった。海上のブローラインを見ているとこの季節特有の大きな波風が寄せていることは明らかだし、上空はまだ強めの風が吹いていることが予想できる。

今回は、途中のャCント撮影を含めてエリアの最北端から最南端まで10kmを飛ばなければならない。1時間余りの燃料が切れたら緊急ランディングするよ・・・ということで、ともかく上がってみた。

上空はやはり6mほどの風が波状に吹いていて、対地速度は12km/hほどしか出ない。鹿島の横まで来たらウェイブの下降風帯に突っ込んで、フルパワーでどんなに頑張っても上昇できず、やっと稼いだ200mから50m近く高度を失った。まあ、この世界には「シンク(下降風)あるところリフト(上昇風)あり」という法則があって、しばらく辛抱していたら必ずリフトに当たる。問題は速度だ。

中間地点にあるお寺(善応寺)を大きなS字旋回で撮り終えた頃には残りの燃料が30分を切った。南端の古戦場跡や縄文遺跡までたどり着くのが精一杯かな~・・・と安全に降ろせそうな場所を探しながら飛んでいたら、高度300mあたりでGPSの速度表示が時々20kmに届くようになった。よし、これなら大丈夫だ。

南端まで移動するのに約20分。この間、撮影に集中していたカメラマンもいくらか暇になる。2人で瀬戸内の島影に落ちようとする、静かに紅い夕日を楽しんだ。間もなく南端部の撮影も終えて後は追い風に乗せて帰るだけ・・・まだ多少燃料の余裕はあったが、念のために第2テイクオフとして用意しておいた近くの海岸にランディングしてタスクを終えた。

この世界は毎回のフライトが新しい体験で、今回の仕事もいろいろ楽しく学ぶことが多かった。仕事やお金を生み出す人間社会と飛行の基礎となる自然世界との関係や調和・・・簡単に言えばこんなテーマについて、更に深く考えることができたように思う。ありがたいことだ。良い経験をさせてくれた営業部長、酔い止めを飲みながら頑張ってくれたカメラマン、難しい注文を付けてくれたディレクターにも感謝したい。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする