28日の毎日新聞夕刊に、BSの報道番組に関する記事が掲載されました。
この中で、解説をしています。
BS報道「じっくり」売り
民放のBSといえばのんびりした旅ものや韓流ドラマの印象が強いが、実は各局とも報道番組に力を入れている。いずれもテーマを絞り、キーマンや専門家にじっくり話を聞くスタイルが人気で、春の改編で大物キャスターを登場させた局も。地上波さながらの戦国時代に突入しつつある。【瀬尾忠義】
視聴率にとらわれず
甘利明・環太平洋パートナーシップ協定(TPP)担当相が15日夜、東京都内のBS11のスタジオに現れた。TPPの交渉で、渡米する直前のタイミング。生放送の「報道ライブ21 INsideOUT」で、4月からキャスターを務めるベテランアナウンサー、露木茂さんらの質問に答え、約50分間交渉のポイントなどを語った。政治家の単独インタビューは「民放地上波のニュースでは10分以上はまずない」(同局)とされ、BSならではの長さが際立つ。
報道番組の競争は、BS日テレが昨年9月に「深層NEWS」をスタートさせ本格化した。同社と日本テレビ、読売新聞が組んで出演交渉力を発揮するのが特徴だ。BS日テレ広報部は「番組の認知度が高まってきて、出演がスムーズにまとまる好循環が続いている。じっくり話を聞いてニュースの深層を伝えるスタイルは、地上波では飽き足らない視聴者を取り込んでいる」と手応えを語る。
昨年4月から放送し、先行するBSジャパンの「日経プラス10」は日経新聞と連携し経済情報に特化している。春からはテレビ東京の経済番組で16年間キャスターを務めた小谷真生子さんを起用。早速、ローソンの新浪剛史・最高経営責任者(CEO)ら話題の経営者の本音に迫った。
BS朝日は昨年10月から「地上波とは一線を画す深掘りのニュース番組」をうたう「いま日本は」を土曜日に、BS−TBSは同4月から「週刊BS−TBS報道部」を日曜日に放送する。後者は当事者をスタジオに招いて議論する「トップストーリー」が売りの一つ。ともに系列局が平日夜に比較的好調な地上波ニュース番組を持っており、すみ分けを選んだ格好だ。
「じっくりと話を聞くスタイル」をいち早く構築したのがBSフジの「BSフジLIVE プライムニュース」(2009年4月スタート)だ。背景には、BS特有の“事情”がある。
地上波の視聴率が機械式で分刻みで算出されるのに対し、民放BS6社の視聴状況は全国1000世帯が毎月特定の1週間に視聴した番組を記録した日記を基に「接触率」として算出されるだけ。「分単位の視聴率に追われる地上波では、バトルと呼ばれる過激な討論がみられるが、BSでならバトルをあおらず、落ち着いた議論をする報道番組を作れると考えた」(BSフジ報道局)。予算が潤沢にないならゲストにスタジオまで来てもらえばいい、という逆転の発想も長続きに結び付いた。
「政治家のPR」懸念も
ただ、各局とも政治家の出演が目立つだけに「与党に偏り、アピールする場として利用されている」と問題視する声も。BS11の二木啓孝報道局長は「与党議員の次は野党議員というように番組全体でバランスを取っている。キャスターが疑問点をぶつけて引き出した言葉が視聴者の判断材料になっており“政見放送”にはならない」と反論する。
碓井広義・上智大教授(メディア論)は、「地上波では重要な内容でも視聴率が取れないと判断されれば放送されないが、視聴率競争に追われないBSは制作者の自由度が高い。良質な番組が生まれやすく、意識の高い中高年を中心に支持されている」とした上で、「視聴者側も、政治家がなぜこのタイミングで出演し、長く語ることで何を動かそうとしているのかを考えなければならない」と指摘する。
【BS各局の主な報道番組】
BS日テレ 深層NEWS(月〜金22〜23時)
BS朝日 いま日本は(土18時54分〜20時54分)
BS−TBS 週刊BS−TBS報道部(日21時〜22時54分)
BSジャパン 日経プラス10(月〜金22時〜同54分)
BSフジ プライムニュース(月〜金20時〜21時55分)
BS11 報道ライブ21 INsideOUT(月〜木21時〜同54分)
(毎日新聞夕刊 2014.04.28)