碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「スナック キズツキ」は独特の“浮世離れ”感を持った原田知世のなせるワザ!

2021年11月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「スナック キズツキ」は

独特の“浮世離れ”感を持った

原田知世のなせるワザ!

 

こんなスナックがあったら、一度立ち寄ってみたい。そう思いながら毎回見てしまう。ドラマ24「スナック キズツキ」(テレビ東京系)だ。

地下にあるその店は、ママのトウコ(原田知世)が一人でやっている。昭和の喫茶店を思わせるレトロな雰囲気。アルコールは置いていない。丁寧に作るコーヒー、ココア、アップルジュースなどがおいしい。それを飲みながら、客はふと自分の話をしてしまう。

別に大きな出来事があったわけじゃない。職場や家庭、日常生活で感じる、ささいなストレス。でも、どこか疲れがたまっている。心がちょっと傷ついている。問われぬままの小さな告白。それだけで少し救われるのだ。

さらにママは異空間を現出させる。部下とのコミュニケーションが苦手な佐藤(塚地武雅)と「エアギター」の競演。再就職がうまくいかない冨田(徳永えり)と、抱えた鬱屈を言葉にする「しりとり」。そして自分を見失い、若い頃が恋しくなった香保(西田尚美)とは、懐かしのユーロビートに乗ってダンスだ。

店を出るとき、客は来る前より心が軽くなっていることに気づく。しかも、その効果は日常に戻っても続くのだ。

トウコママのマジック? いや、原田知世という、独特の“浮世離れ”感を持った女優のなせるワザだろう。このドラマ、原田のテレ東系連続ドラマ初出演にして初主演である。

(日刊ゲンダイ 2021.11.17)