川口春奈主演「9(ナイン)ボーダー」
悩めるボーダーたちへの柔らかな応援歌
うまいタイトルをつけたものだ。川口春奈主演「9(ナイン)ボーダー」(TBS系)である。ここでは20代や30代といった各年代の最終年やその状態を指している。
孔子は「三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命を知る」などと、節目の年齢における理想像を「論語」で示した。
だが、実際に29歳や39歳というボーダーに立った時、何となく焦りを感じたり、どこか落ち着かない気分になる人は少なくないはずだ。
銭湯を営む大庭家の長女・六月(木南晴夏)は39歳。会計事務所を経営しているが、別居中だった夫と離婚した。
次女で29歳の七苗(川口)は勤めていた会社を勢いで辞めてしまった。そして、やや引っ込み思案の三女・八海(畑芽育)は19歳の浪人生だ。
3人は、「私、これからどうしたいんだ?」という迷いの中にいることで共通している。
しかし、彼女たちは基本的に元気だ。七苗がつき合い始めた記憶喪失の青年・コウタロウ(松下洸平)や、六月を慕う部下の松嶋(井之脇海)など、心優しき男たちが近くにいる。何より三姉妹が互いに支え合う姿がほほ笑ましい。
脚本は「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)などで知られる金子ありさだ。
やりたいことや夢には時間制限がないこと。年齢で線引きして諦めないこと。このドラマは、悩めるボーダーたちへの柔らかな応援歌だ。
(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.05.21)