碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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FRIDAY DIGITALで、7月期フジ月9『海のはじまり』について解説

2024年05月25日 | メディアでのコメント・論評

 

 

目黒蓮の主演作なのに…

〝恋愛封印〟に方向転換した7月期フジ月9

『海のはじまり』の勝算を占う

 

人気グループ『Snow Man』の目黒蓮(27)が7月スタートの『海のはじまり』でフジテレビ月9初出演にして主演することが発表された。同作品は親子の愛をテーマにしたオリジナル作品で、目黒は父親役に初挑戦。元恋人が他界した後、彼女がひそかに産んでいた6歳の娘と出会うという難役に挑むことになった。

「フジは春の改編で旧ジャニーズ事務所所属グループの冠番組4本を終了させるなど、同社の創業者・故ジャニー喜多川氏の性加害問題を受け、旧ジャニーズ勢の起用を自粛していました。

しかし、TVerの再生回数や、重視している13歳から49歳までのコア視聴率稼ぎのためか、何事もなかったかのように旧ジャニーズ勢の起用を再開。7月期の金9枠では『Hey! Say! JUMP』の山田涼介(31)が主演を務める学園ドラマ『ビリオン×スクール(仮題)』が放送されます」(放送担当記者)

『海のはじまり』の制作陣には、目黒が難聴を抱える青年役を好演し、社会現象を巻き起こした’22年10月期の同局系『silent』のスタッフが集結。脚本を生方美久氏、演出を風間太樹氏、プロデュースを同局の村瀬健氏が担う。

同局の看板枠である月9は、昨年の7月期では’16年7月期の『好きな人がいること』以来、7年ぶりの王道ラブストーリーである『真夏のシンデレラ』を放送。以後、今年1月期の『君が心をくれたから』や、現在放送中の『366日』はいずれも悲恋のラブストーリーだ。

しかし、今作では旧ジャニーズ所属で若い女性に大人気の目黒が主演にもかかわらず、目黒の相手役として天才子役として注目を集める泉谷星奈(いずたに・らな、6)を起用。ラブストーリーではなく〝親子もの〟にしたのだ。

やはり生方氏、村瀬氏ら『silent』のスタッフが集結した昨年10月期の木10『いちばん好きな花』は多部未華子(35)、松下洸平(37)、今田美桜(27)、神尾楓珠(25)が〝クアトロ主演〟。「男女の間に友情は成立するのか」をテーマに、違う人生を歩んできた4人の男女が紡ぎ出す「友情」と「恋愛」、そしてそこで生まれるそのどちらとも違う「感情」を描くという斬新なドラマだった。

同作品はネット上では放送回の度に好評だったが、平均世帯視聴率は全11話で5.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とあまりふるわなかった。そして、今作は月9で旧ジャニーズ&子役という新たな方向にカジを切ったこととなるが、果たしてドラマの〝勝算〟はあるのか?

メディア文化評論家・碓井広義氏は、「これは目黒蓮のドラマというよりも、脚本の生方美久のドラマというふうに見ています」と指摘する。

「『silent』は広い意味では恋愛ドラマですが、いわゆるイメージとしてパッと浮かぶ男女の恋愛ドラマとはちょっとずれていました。ハンディキャップを抱えた青年の生きづらさを描いた〝恋愛〟ドラマだった点が多くの人の共感を呼んだのです。

今回は『家族』や『親子』がテーマのようですが、生方さんのドラマだから、ストレートなファミリードラマではない。多分に苦みも伴うような〝親子〟の物語、〝家族〟の物語になっていると思うんですよね。『家族』の形が多様化していっている現代に、家族というものをこれまでとは違った視点でテーマ化していく、ドラマ化していくっていうのは、十分にやる価値のあるトライです。

これまでのような恋愛系で中途半端に評判をとって支持を集めていたら、こうはならなかったかもしれないけども、やっぱり、フジテレビとしてもこういう試みをしていく必要が生まれてるんじゃないでしょうか」(碓井氏)

では『silent』放送時の〝再来〟のように社会現象的なヒット作となるのだろうか。

「視聴率的には決してドカンとくることはないと思っています。生方さんのドラマって、いい悪いは別にして地味なので(笑)。ただ、そこにじわじわと伝わる共感性というか、共振性とでもいうべき連ドラならではの味わいがあるので、見た目の視聴率よりも大きな反響を呼ぶ可能性はありますよね」(同前)

フジ月9は注目される枠であるがゆえに放送される作品は話題作となることが多いのだが、『海のはじまり』は久しぶりに〝いい意味での〟話題作となるだろうか。

(FRIDAY DIGITAL