碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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志田未来主演「下山メシ」新たな<グルメ女優>の誕生だ

2024年11月20日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

新たな「グルメ女優」の誕生だ

志田未来主演「下山メシ」

 

なぜ山に登るのかと問われて、「そこに山があるからだ」と言ったのはイギリスの登山家であるジョージ・マロリーだ。

しかし、木ドラ24「下山メシ」(テレビ東京系)の主人公、フリーのイラストレーター・みねこ(志田未来)は違う。声を大にして「下山メシがあるから!」と断言する。下山メシとは、文字通り山を下りた後に味わう、おいしい料理を指す。

第1話で登ったのは奥多摩の御岳山(みたけさん)。立ち寄ったのは、古里(こり)駅前の「はらしま食堂」だ。まずは生ビールを一杯。志田の飲みっぷりがいい。続いてメインの「あじフライ定食」に取りかかる。

ここからは一気に志田未来版「孤独のグルメ」だ。ただし井之頭五郎(松重豊)の〈心の声〉ほど饒舌ではない。あじフライにかぶりつき、「ああ、カロリーで疲れが癒されていく」と言った後は、ひたすらもぐもぐ、サクサクと食べ続ける。

そして「やっぱり揚げ物の選択は間違ってなかった」と満足げにつぶやいたのは、何と2分後のことだ。ワンカット長回しのカメラを前に、セリフ無しの食べる動作と顔の表情だけで、料理の味と下山メシの愉悦を表現してみせたのだ。

しかも見る側をまったく飽きさせないのは、少女時代の「女王の教室」(日本テレビ系)や「14才の母」(同)から現在まで培ってきた強靭な演技力の賜物といえる。新たな「グルメ女優」の誕生だ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.11.19)