徹底した私視点で描く一作
サカイ引越センター
私の引越日記
「はじまり」篇、「見積り」篇
相米慎二監督の映画「お引越し」を観たのは約30年前のことだ。両親の別居に心が揺れる少女を演じてデビューした、田畑智子さんが印象的だった。
サカイ引越センターの新CМシリーズ「私の引越日記」に登場したのは平川結月さんだ。「王様戦隊キングオージャー」(テレビ朝日系)などで活躍してきたが、今回は等身大の女性がよく似合っている。
初めての引越に臨む結月さん。まずはスマホで引越会社を検索し、母親や友人の意見も参考にする。意を決して電話。「初めての私でもなんとかなりそうだ」という安心感がありがたい。
やがて引越アドバイザーが見積りのためにやって来る。結月さんは「まあまあ荷物あるなあ、って思ってるよなあ」と気にするが、誠実に対応するアドバイザーに信頼感が増す。
世の中に同じ引越はない。あるのは個々の人生の物語だ。このCМは徹底した「私」の視点で作られており、小さな不安や喜びも丁寧に織り込んでいる。引越という「決断と実行」の先にある、新たな生活への期待も膨らんでいく。
(日経MJ「CM裏表」2025.02.03)