碓井広義ブログ

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『集団左遷!!』は、第2章で「V字回復」を果たせるか!?

2019年06月16日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

日曜劇場『集団左遷!!』は、

第2章で「V字回復」を果たせるか!?

先日、第1章が終了した、日曜劇場『集団左遷!! 』(TBS系)。舞台は新作の制作が伝えられている、『半沢直樹』と同じく銀行です。
 
主演は“Mr.イケメン俳優”の福山雅治さんで、“Mr.カメレオン俳優”の香川照之さんが脇を固めているわけですが、ドラマは一向に盛り上がらないまま、第1章の幕が下りました。

ストーリーに難のあった第1章
 
低迷の要因ですが、主演のせいではないと思います。
 
福山さんは確かに熱演しています。ただ、その熱演が、顔面の筋肉体操のような表情作りだったり、「がんばろう!」の大声だったり、拳を握ってリキむ演技だったりと、いちいちオーバーで不自然で鬱陶しい。これは福山さん本人ではなく、これを良しとした演出側のミスでしょう。
 
問題はストーリーでした。
 
銀行本部が、業績の悪い12支店の廃店と行員のリストラを決めました。支店長たちには、「何もするな」と命令が下ります。
 
蒲田支店長の片岡(福山)は納得がいかず、責任者の横山常務(三上博史)から「融資100億円を達成したら廃店にはしない」という約束を取り付けました。
 
片岡も、次長の真山(香川)も、そして行員たちも、がむしゃらに頑張ります。しかし大口融資が決まりそうになると、それが詐欺だったり、横山から横やりが入ったりで、なかなかうまくいきません。
 
思い起こせば、第1章は、ひたすらこの繰り返しでした。つまりパターン化です。片岡が信頼していた、会社社長・町田(赤井秀和)の裏切りも、「ああ、どうせ途中で頓挫するんだよね」と視聴者には予測がつき、しかもその予測通りの展開になってしまった。これでは飽きるのが当然です。
 
結局、蒲田支店は廃店となりましたが、行員たちのリストラ自体は回避できました。しかし、これすら予定調和に見えてしまったのも、ストーリーというか、脚本に無理があったからではないでしょうか。

V字回復をめざす第2章
 
第2章に入って、片岡は銀行本部の融資部に異動しました。本部は、専務に昇格した横山が権謀術数をめぐらす、伏魔殿のような場所と化しています。
 
そんな横山の「裏金づくり」を告発した片岡ですが、味方だと思っていた頭取の藤田(市村正親)の裏切りに遭ってしまいます。相変わらず甘いぞ(笑)、片岡!
 
自分たちの支店を守ろうと奔走する話だった第1章に比べ、三友銀行自体の存続にかかわる事態が発生し、企業ドラマとして面白くなってきたのは確かです。
 
見どころは、草の根のような行員たちの取り組みで、上層部の不正をきっちりとただし、本来の使命を果たす銀行に変えることができるのか、ですね。
 
とはいえ、残りの回数は、あとわずかしかありません。第2章で広げたばかりの大風呂敷をいかに畳むか。見る側が納得のいく決着へと導けるか。これまで以上に脚本の力が問われます。

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