碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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村上龍『無趣味のすすめ』に思う

2009年04月22日 | 本・新聞・雑誌・活字
村上龍さんの新刊『無趣味のすすめ』を読む。

自分が大学生だった70年代からの読者なので、いまだに「龍さん」と呼びたくなる。

このエッセイ集、いわば「テレビ東京『カンブリア宮殿』の村上龍」の本だと思えばいい。番組で会った方々をめぐるエピソードも多い。

主な対象はビジネスマンだが、誰にも心当たりのあることや、逆に気がつかずにいたことをすっと指摘してくれる。

たとえば、<目標>について、「本当は水や空気と同じで、それがなければ生きていけない」と書く。

「目標を持っていなければ、人は具体的にどういった努力をすればいいのかわからない。ものごとの優先順位もつけられない」のだ。

そうかもしれません。

また、<読書>に関して、「どんな職業の人でも、読書をするかしないかが問題ではなく、どんな情報を自分は必要としているかを自分で把握できるかどうかが問題である」

確かに。

<品格と美学>をめぐっては、「仕事に美学や品格を持ち込む人は、よほどの特権を持っているか、よほどのバカか、どちらかだ」という。

うーん、過激です(笑)。

この本には、村上龍の確信に満ちた言葉があふれている。ビジネスマンにとって有益・有効なものも多い。それはそれで大いに参考にしていただけばいいと思う。

その一方で、33年前に、学生下宿の一室で、刊行されたばかりの『限りなく透明に近いブルー』を読んだときの、そう軽くないインパクトを思い出す。

そのインパクトゆえに、こうして今も“村上龍が書くもの”を読み続けているのだが、「(龍さんも)思えば遠くへ来たもんだ」という個人的な感慨も、ないとはいえないわけです。


無趣味のすすめ
村上龍
幻冬舎

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