碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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名監督のシブ~イ佳作『グラン・トリノ』

2009年05月02日 | 映画・ビデオ・映像

クリント・イーストウッド監督・製作・主演の映画『グラン・トリノ』を観た。

『スペース カウボーイ』(00)
『ミスティック・リバー』(03)
『ミリオンダラー・ベイビー』(04)
『硫黄島からの手紙』(05)
『父親たちの星条旗』(06)
『チェンジリング』(08)
そして
『グラン・トリノ』(08)

今年79歳だそうだけど、いやあ、益々の名監督ぶりであります。

クルマの街、デトロイトが舞台。

破産報道があった、あのクライスラーも、ここが本拠地だ。

イーストウッド演じる主人公は、長くフォードに勤め、リタイア後もこの街で一人暮らしだ。妻はもう亡くなっている。

2人いる息子のうち一人が、日本車のディーラーで仕事をしている、という設定も、まさに今どきだ。(映画の中にはホンダ車がよく出てくる)。

イーストウッドは、フツーにいえば、偏屈な頑固爺さん、といった役どころ。そんな男の隣に住むのが、モン族の一家である。

モン族。恥ずかしながら、今回、初めて知りました。

ミャンマー、タイ、中国などにまたがった地域に暮らす民族だ。もちろん、一家は移民としてアメリカに来た。

映画は、イーストウッドと、このモン族一家の子ども(若者)たちとの“関わり”が軸になっている。


”移民先の国”で、マイノリティーとして暮らす彼らの現実・日常。

朝鮮戦争での体験を胸の奥に抱えながら、“自分の国”の現在(いま)に、納得できないでいる老人。

“人生という名の兵学校”があるとすれば、去り行く者(老兵)が、これからを生きる者(新兵)に対して、何ができるのか。いや、すべきなのか。

監督イーストウッドと、俳優イーストウッドが、まさに自らの“行い”で教えてくれる映画だ。

ずしんとくるが、暗くはない。

“誰かに何かを託す”ことで生まれる、希望のようなもの。それが感じられるからだ。

きれいな女優さんやスターで成立している作品ではない。知っている出演者はイーストウッドだけ、と言ってもいい。

脚本の出来のよさ。そして、イーストウッド監督のストーリーテリングの妙技。

名監督が、シブ~イ佳作をまた1本、作り上げた。

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