川本ちょっとメモ

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黒川弘務検事長定年延長「閣議決定」は違法 仙台弁護士会会長声明から逐条解説 弁護士議員は違法政治に抗議するべし  

2020-05-17 23:29:41 | Weblog

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2020-05-25
2020-06-05



仙台弁護士会の「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」 2020.3.12. をもとに、1月31日閣議決定が違法である根拠を箇条書きに書き直してみます。このほうがわかりやすいので。


(1) 検察庁法 第22条 検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他
   の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。


(2) 黒川弘務東京高等検察庁検事長は上記(1)の検察庁法22条の「その
   他の検察官」にあたる。

(3) 黒川弘務氏は1957年2月8日生まれ。 検察庁法22条の「年齢63年に達
   した時」とは、厳密には、2020年2月8日午前0時。一般にはその前日
 (2月7日)に退職する。本来なら、本年2020年2月7日に定年退職し
  ていたはずである。

(4) これに対して安倍内閣は、本年2020年1月31日の閣議で、黒川弘務
   東京高検検事長の半年間の定年延長を決定した。黒川弘務検事長の定年
  退職は本年2020年8月7日まで延びた。

 (5) この「定年延長」閣議決定の根拠法令は、国家公務員法第83条の2
   第1項、条文は次の通り。

(6) (定年による退職の特例 ) 
     国家公務員法第81条の3第1項
      任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべ
    きこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の
    職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著し
    い支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定に
    かかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超
    えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引
    き続いて勤務させることができる。 

(7)  検察官も国家公務員であるが、1月31日閣議決定は合法なのか?
    検察庁法の検察官の身分処遇に関する条項を飛び越えて、国家公務
    員法を適用するのは、違法ではないのか?
  
(8)  検察庁法第32条の2の条文が、国家公務員の一般法である国家公 
    務員法附則第13条を取り上げている。ここで、検察官の身分、職務が
    司法に関係して特殊性を有することから、検察庁法は国家公務員法
    に対する特別法であると定めている。

(9) 検察庁法 第32条の2、条文は下記(9-1)の通り。
       国家公務員法 附則第13条、条文は下記(9-2)の通り。

(9-1) 検察庁法 第32条の2 この法律第15条、第18条乃至第20条及び第
    22条乃至第25条の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)
    附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同
    法の特例を定めたものとする。

(9-2)  国家公務員法 附則第13条 一般職に属する職員に関し、その職務
    と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、
    別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項につい
    ては、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例
    は、この法律第1条の精神に反するものであつてはならない。 

(10) 上記(8)で結論している、検察庁法が国家公務員法に対する特別
    法であるとは、検察官に対する法適用において、検察庁法が国家公務
    員法に優先する、ということである。

     従って、検察庁法を超えて国家公務員法を適用した1月31日閣議
    決定は違法である。

(11) 検察庁法では第22条で定年を定めているが、検察庁法に定年を延
    長する条項が無い。

(12) 黒川弘務東京高検検事長の定年延長閣議決定を合法と肯定する者
    は、検察庁法に定年延長の条項が無いのは、検察庁法の欠陥である―
    ―という前提に立っている。

(13) 検察官も国家公務員に違いはなく、検察庁法の欠陥を補うために
    家公務員法第81条の3第1項を援用するのはあたりまえだろうという
    理屈である。

(14) 上記(12)(13)の考えは素朴に過ぎる。短絡に過ぎる。
      検察は国家そのものに害を成すと判断した公安事案には、政権と一
    体になって国家権力の強烈な性格を見せる。

     しかしそれよりも、国民が検察に大きな期待をかけている第一は、
    公正でない政治家を退治すること。検察の使命もそこにあり、検察も
    国民の期待に応えたいと意識している

     だから、検察官は、間断なく政治権力の圧力や干渉にさらされてき
    た。検察官といえども政治権力の圧力には弱い。

     このゆえに政治的中立という思想が検察庁法の立法思想にこめられ
    ている。検察庁法に「定年延長」条項が無い理由は、「検察の政治的
    中立」を守るためという積極的な理由があった。

(15) 仮に、どうしても検察庁法の欠陥であると考えるとするならば、国
    家公務員法附則第13条の規定と検察庁法第32条の規定を改変しなけれ
    ばならない。さらに、検察庁法第22条も改変するか、新しい条文を追
    加するという法改変が必要になる。

(16) 仙台弁護士会会長声明は、国家公務員法第81条の3第1項 [上記 
    (6)参照] の援用を根拠にした1月31日閣議決定は、検察庁法第 
      22条 [上記(1)参照] に違反し、違法である、としています。  

(17) 最後になりますが、閣議決定の法令根拠をそのまま認めるとして
    も、という条件で会長声明が考察しています。

(18) 閣議決定根拠の国家公務員法第81条の3第1項は、任命権者が特定
    職員の定年延長を決めるためには、「その職員の職務の特殊性又はそ
    の職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の
    運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」と規
    定している。

(19) 「その退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十
    分な理由」とは、人事院規則11-8第7条が列挙している。

(20) 人事院規則一一―八(職員の定年) 人事院は、国家公務員法(昭
    和二十二年法律第百二十号)に基づき、職員の定年に関し次の人事院
    規則を制定する。

   第七条 勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合におい
    て、次の各号の一に該当するときに行うことができる。
     職務が高度の専門的な知識、熟達した技能又は豊富な経験を必要
     とするものであるため、後任を容易に得ることができないとき。
     勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職
     により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重
     大な障害が生ずるとき。
     業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の
     継続的遂行に重大な障害を生ずるとき。

(21) 黒川検事長については、上記(20)記載の人事院規則第七条に列
    挙する事由のいずれに該当するかについて合理的な説明がなされて
    いない。従ってこの点でも容認できない。国家公務員法および人事院
    規則に違反している。(会長声明)


   *次下に仙台弁護士会会長声明の全文を弁護士会ホームページから転載します。

   -------------------------------------------------------------------------


2020年03月12日
東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を
直ちに撤回することを求める会長声明
仙台弁護士会



検察庁法22条は、「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」と定める。東京高等検察庁の黒川弘務検事長は「その他の検察官」にあたり、本年2月7日に退官する予定であった。ところが、安倍内閣は、本年1月31日の閣議で、国家公務員法81条の3第1項の規定を根拠に黒川検事長の定年延長を決定した。

国家公務員法81条の3第1項は、任命権者は、定年に達した職員が退職すべきこととなる場合において、「その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは」、定年退職予定日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で、その職員の定年を延長することができるとしている。

しかしながら、検察官も国家公務員ではあるが、国家公務員の身分や職務に関する一般法である国家公務員法とは別に、検察庁法が特別法として、検察官の定年を定めているのであるから(検察庁法32条の2)、国家公務員法81条の3第1項が検察官に適用される余地はないというべきである。


しかも、国家公務員法81条の3が新設された1981年当時の国会審議では、人事院が検察官にはこの規定は適用されないという考え方を示したことを踏まえて同規定を含む法案が可決成立しており、立法者意思は明確に示されていた。


条文構造から見ても、国家公務員法81条の3第1項は、「前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において」とし、同法81条の2(定年による退職)を前提にした勤務延長を規定するが、検察官には同法81条の2の適用はない以上、同条を前提とする国家公務員法81条の3の適用も当然にない。


安倍首相は、本年2月13日の衆院本会議で、上記政府見解の存在を認めた上で、安倍内閣として閣議決定で解釈を変更したことを明言した。


しかしながら、上記のとおり、国家公務員法81条の3は検察官には適用がないことを前提に国会で審議され制定されたものである。


それをときの内閣の都合で国会の審議も経ずに変更することは、国会の立法権を軽視するものであり、三権分立の趣旨に反する。


そもそも、検察庁は「検察の理念」として「厳正公平、不偏不党を旨として、公正誠実に職務を行う」ことを掲げている。


刑事司法の一翼を担い、強大な捜査・訴追権限を有している検察官の人事のルールは、国政上の最重要事項の一つであり、全国民を代表する国会の審議・決定をも経ずして、単なる閣議決定で決められるべき事柄ではない。


ときの政権の都合で、こうした重大事項についても、立法者意思を無視し、従来の法解釈を恣意的に変更してかまわないということでは、法治主義の否定にほかならない。


したがって、黒川検事長の定年延長を認めた閣議決定は、検察庁法22条に違反し、違法である。


なお、念のため付言すると、仮に閣議決定により解釈変更をして検察官にも国家公務員法を適用して定年を延長できると考えたとしても、それが可能な場合は現行法上、きわめて限定されている。


国家公務員法81条の3第1項によれば、定年延長には「その退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由」が必要である。


そうした理由が認められる場合を人事院は、その規則で限定列挙している(人事院規則11-8第7条)が、 黒川検事長については、同条の列挙する事由のいずれに該当するかについて合理的な説明がなされていない。


したがって、黒川検事長の定年延長を認めた閣議決定は、国家公務員法および人事院規則に違反している疑いが極めて強い。


任命権者の恣意的判断でこれらに反する定年延長が許されるとなれば、内閣から独立した立場から国家公務員の政治的中立性と計画的人事を支える人事院の機能が没却されかねない。


 今回の定年延長は、明らかに違法であり、検察の政治的中立性を損ないかねず、国民の検察に対する信頼をも失わせるおそれが大きい。


 よって、当会は、政府に対し、黒川検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める。


2020年(令和2年)3月12日


仙 台 弁 護 士 会
会 長 鎌 田 健 司



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