ブログ

 

「セーヌの岸辺」 池澤夏樹

2015-01-21 | 読書

年末に買って少しずつ読んで、やっと本日読了。元は文芸誌「すばる」に2006年から二年以上連載したちょっと長めのエッセイと、コヨーテという雑誌に掲載したものからなっている。

パリから南へ50km、城や森のある静かな街フォンテーヌブローに2004年から家族で移住し、そこで見聞きしたことや、それをきっかけとして考えたことなどが多岐にわたって書かれている。

セーヌ川は作者の住む町にも流れていて、表題はそういう意味らしい。セーヌはパリだけのセーヌに非ずということなんでしょう。

どれもエッセィという制約上、断片的ではあるし、時事に亘ることは今となれば「そんなこともあった」と少し懐かしかったりするが、著者の現場斜め上空の風通しのいい場所から俯瞰してみる様々なことはなるほどそうなんだと頷くことも多かった。

いちいちあげるときりがないけれど、フランスとアメリカの国としての成り立ちの違いからくる国民性の違いだとか、フランスと日本の景観に関する考え方の違いなどが、面白かった。

宮島の対岸、山の中腹にある奇妙な建物、フランスならあり得ないと書かれている。そうですよね。景観も地域の財産、鳥居の向こうのあの宗教施設、いつできたのか記憶にないのだけど、昔はなかった。美術館を兼ねてるので友人が行ってみたら、とっても怪しい雰囲気だったとか。美術館は税金対策かも。よく分からないけれど。

いけません、話がまたまたそれました。作者は私よりちょっと年上なんだけど、ものすごい博覧強記、書かずはおれなかったpassionを溜め、一気に放ったのは30台後半から40にかかるころだったと記憶している。

この作者の本、だいぶ前、まとめて読んだ。日本文学特有の暗さ、湿っぽさがなくて、それはそれでいいんだけど、恨みつらみ、嫉妬に人の悪口などネガティブな感情こそが人をより多く動かせるきっかけとなる場合もあるわけで、世間の波にもまれてアップアップしている私は肌合いの違いを感じ、熱心な読者とはならなかった。

しかしフランスにもう長い間住んでるみたいで、羨ましくなって買った。買って読んで、フランスに住んでることが一層羨ましくなった。私の場合、実現性が低いので、せめて読んで自分を慰めてみる。

セーヌ川/パリ市内 昨年4月

エッフェル塔遠景 昨年4月

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

手織り

にほんブログ村 ハンドメイドブログ 手織り・機織りへ
にほんブログ村

日本ブログ村・ランキング

PVアクセスランキング にほんブログ村