京都市右京区の太秦(うずまさ)は
日本のハリウッドと云われて
松竹、東映、大映と撮影所が
集まっていました
… … …
太秦のこれら撮影所は主に
時代劇映画を制作していました
スタジオで撮影の準備が整ったころ
主演の俳優さんが付け人(つけびと)を
従えて「お待たせいたしました…」と
セットに入ってきました
… … …
今日の出番は市川雷蔵(いちかわ・らいぞう)さんで
羽二重(はぶたえ)と鬘でメーキャップして
時代劇の衣裳で扮装した姿は時代劇スターさんでした
その雷蔵さんが仕事のないとき
撮影所内を歩いているところは
普通の地味なコートを着て
薄い書類入れのような黒っぽい鞄をさげ
眼鏡をかけて、一見、街の銀行員のような
サラリーマンに見えました
その銀行員風サラリーマンに
「おKさん、おはよう…」と
声をかけられて、
「アッ雷蔵さん…!」
と驚いたことがありました