■■【経営コンサルタントのお勧め図書】思考の原点「5W1H思考」
「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
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■ 今日のおすすめ
『シンプルに結果を出す人の「5W1H思考」』(渡邉光太郎著 すばる社)
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■ 課題の発見・提起・解決に欠いてはいけない「5W1H思考」(はじめに)
ビジネスは、「課題の発見・提起」と「課題解決」の連続ではないでしょうか。
それが経営改革・改善に繋がるのではないでしょうか。
これについて、私が今までに学んだことは、『「課題の発見・提起」と「課題解決」は、意思決定ツールである「フレームワーク思考」「オプション思考」「プロセス思考」の3つを主とするロジカル・シンキングを手段・ツールとし、思考の手順を統合的に体系化したクリティカル・シンキング(思考技術体系)の枠組みと組合せた上で、取り組むことによって、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)に、且つ正しい方向に進めることができる』でした。(「クリティカル・シンキングがよーくわかる本」〈今井 信行著 秀和システム〉より)
そんな中で、紹介本を見つけました。ビジネス・フレームワークとして誰でも知っている当たり前の『「5W1H」思考』が『「課題の発見・提起」と「課題解決」』にどのような威力を発揮できるのか、半分疑問を持ちながら手に取った次第です。
読んでみて感じましたのは、どちらかというと「フレームワーク・シンドローム」に近い私にとっては戒めになりました。先程引用しました「クリティカル・シンキング」的な枠組みとして『「5W1H」思考』を使えば、『「課題の発見・提起」と「課題解決」』に面白い・良い結果を与えると確信し、ご紹介することにしました。
紹介本は著者が、『どんなカッコいいフレームワークを使って難しい分析をしたって、シンプルに「5W1H」に落とし込まなきゃダメだよな。こんな単純なことが大切で、良い結果を生むのだ』との思いで積み重ねてきたコンサルティング経験の結果を紹介本に著したのです。
その意味で、紹介本に著されているような事例を基にした普遍的な論理は、同じような課題にピタリとはまるでしょう。また、『シンプルな「5W1H」思考』は、言うまでもなく、見逃しがちではありますが決して欠くことのできない、課題発見・提起・解決の重要な原点として思いを新たにする必要があります。
著者が紹介する『「5W1H」思考』の興味ある事例を次項でご紹介します。
■ 「5W1H思考」の効果を発揮するビジネスシーン
【課題提起は「Big Why」で「真の目的」にさかのぼる】
著者は『「5W1H」思考』の長所を活かすために「5W1H」の特徴を見いだし、認識することがスタートと言います。それは、「5W1H」が現す内容の幅の広さと、発散思考から収束思考へ導く思考プロセスであるとします。扇をイメージしてください。扇の“親骨”と“子骨・中骨”に挟まれた部分を“扇面”とします。それらの中心となる“要(とじり)”が有ります。この三つに囲まれたそれぞれの扇面に、When(いつ:時間・過程軸)、Where(どこで:空間・場所軸)、Who(誰が:人物・関係軸)、Why(なぜ:目的・理由軸)、What(何を:事象・内容軸)、How(どのように:手段・程度軸)を置きます。これを一つのマトリックスと考えると、扇を広げた外側を“視野軸”とすると、扇を開くことで多くの内容が入ってきます。“骨”を“思考体系軸”とすると、課題が発散から収束へ、具体的な見えやすいものから見えにくい核心へと迫ることになります。さらには、“思考体系軸”を上り降りすることで、仮説・検証が繰り返され、課題発見・提起・解決の精度が高まるというのです。
さて本題に戻り、この様な『「5W1H」思考』の特徴を生かしながら『「Big Why」を使って「真の目的」にさかのぼる』ためにはどうすればよいのでしょう。著者は、発想のスタートが具体的に見えやすい“What”・“How”と言う“モノレベル”に止まることなく、「ありかた(コトレベル)」「ありがたみ(ライバルにない高次の価値レベル)」「あたらしみ(従来にない革新的な価値のレベル)」の3つのチェックポイントに絞り「真の目的」を突き詰めていく事ができるとします。その上で初めて「真の目的」を達成する“What”と“How”を見つけることが大切と言います。その実例として、最初にロボット掃除機を開発した「ルンバ(アイロボット社)」の例を挙げています(ダイソンも後に同様の製品を販売)。
【問題解決は「3W1H」で「筋の良い打ち手」に絞り込む】
著者は、問題解決には、最初から細部に入り込む非効率な「決め打ち(たまたま目についた事象に捉われて、根拠なく安易で慣れたな結論に飛びつくこと)」と「むだ打ち(手当たり次第に情報を収集・分析するなど、総花的に対策を打とうとすること)」の思考をやめ、クリティカル・シンキング的な「クエスチョニング・プロセス」を推奨します。このプロセスは、「What(何を解決するのか?=問題の設定=)」「Where(どこが悪いのか?=問題個所の特定=)」「Why(なぜ起こるのか?=問題原因の究明=)」「How(どうすればよいのか?=解決策の立案=)」の順番で真の問題の特定から解決に繋げていきます。このプロセスは、様々な問題解決に活用できる汎用性の高い“型”と言えると強調しています。
■ 「5W1H思考」を新たな「思考技術体系」に加えよう(むすび)
紹介本は、「5W1H」を単なる「意思決定ツール」としてのフレームワークではなく、『「5W1H」思考』として、クリティカル・シンキング(「思考技術体系」)にまでレベルアップして、課題発見・提案・解決に活用しようとの提言と受け止められます。
この提言は、様々な実例や、著者のコンサルティング経験に基づくものです。「思考技術体系」の知見・ツールの一つとして新たに加えたいですね。
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【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm
http://sakai-gm.jp/
【 注 】
著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。
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