ごっとさんのブログ

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タンパク医薬 インターフェロン

2015-01-07 11:43:28 | 
このブログで以前、これからの医薬品として、抗体医薬の話を書きました。通常の低分子医薬ではなく、高分子のタンパク質を医薬品として使用する最初の試みが、インターフェロンでしょう。
インターフェロンの歴史は古く、その存在は1960年代に、サイトカインの1種として報告されています。その後ウイルス全般に効果があることがわかり、1980年代に入って抗腫瘍活性が確認され、抗がん剤の可能性も出て、多くの製薬企業がこの生産に取り組みました。この時代は動物細胞の培養技術や、遺伝子工学による目的とするたんぱく質生産の研究も盛んになっていました。

サイトカイン類は、生体の超微量物質であり、免疫系や炎症に重要な役割を果たしていることがわかっても、なかなか解明が難しい分野でした。やはりあまりにも微量なため、取得が難しいという点や、複数のサイトカインが相互作用でいろいろな生理活性を示すという難しさがあったようです。その代表としてインターフェロンが取り上げられ、なんとか人工的に作れないかという研究が盛んになりました。

私が勤務していた研究所も、インターフェロン生産は重要なプロジェクトでした。私は直接関与していなかったのですが、その大変さは伝わってきました。動物細胞にインターフェロン遺伝子を組み込み、培養液中に蓄積させるということも難しく、かなりの時間がかかったようです。またインターフェロンが含まれている培養液から、目的物を精製することも新しい技術でした。タンパク質の安定性から、低温での操作が必要で、精製グループは4℃という低温実験室で、分厚い防寒具を着て実験をしていました。

このような研究過程を経て、インターフェロン製剤が生産可能になったわけです。現在は抗ウイルス剤としてC型肝炎の治療や抗がん剤として多発性骨髄腫の治療に使用されています。当初は非常に高価であったものが、かなり安価になり、現在では猫のインターフェロンまで発売されており、猫白血病などに使われているようです。タンパク医薬の基本的性質として、発熱などの副作用が出るようですが、これも精製方法が進歩し、かなり軽微なものになってきたようです。

このような経過を見ていると、タンパク質という非常に扱いにくい物質が、比較的簡単に人工的に作られるようになったことは、技術の進歩の素晴らしさが際立った事例と考えています。生命の微妙な機構は、タンパク質によってコントロールされていますので、これからも新しいタンパク質医薬が出てくることを期待しています。