ごっとさんのブログ

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鶏卵によりタンパク質生産

2018-08-12 10:32:16 | 化学
産業技術総合研究所は、卵白に有用組み換えタンパク質を大量に含む遺伝子改変ニワトリを作製する技術を開発したと発表しました。

この技術は、次世代の遺伝子操作技術としてさまざまな動植物で研究されているゲノム編集技術をニワトリに適用し、卵白の主要なタンパク質のオポアルブミンの遺伝子座に、有用タンパク質のモデルとしてヒトインターフェロンの遺伝を挿入する技術です。

また遺伝子を挿入したメスのニワトリが生む卵は、卵白にヒトインターフェロンのタンパク質を大量に含むこと、雄の遺伝子挿入ニワトリを利用して繁殖できることが確認されました。

近年バイオ医薬品など組み換えタンパク質の需要は拡大していますが、高い製造コストが課題となっています。この課題を可決するためにさまざまな生物遺伝子を改変し、組み換えタンパク質を低コストで作り出す「生物工場」が注目を集めています。

例えばヤギを遺伝子改変し乳汁に医薬品となるタンパク質を作らせたり、遺伝子改変イチゴを用いてイヌの歯肉炎低減剤を製造するなど、すでに実用化されている生物工場もあります。

鶏卵の卵白は多くのタンパク質を含み、しかも安価に大量生産できることから、ニワトリは組み換えタンパク質の生物工場として有望視されてきました。しかしニワトリは受精直後の卵細胞の操作が困難なため、高精度な遺伝子改変はほとんど例がなく、組み換えタンパク質を含む鶏卵を安定して大量生産する技術はありませんでした。

この研究所は、ワクチンやバイオ医薬品、再生医療研究試薬などを目指して、これまでに卵白アレルゲン遺伝子を欠損したニワトリをゲノム編集により作成してきました。今回は卵白タンパク質の約半分を占めるオポアルブミンの遺伝子座にヒト遺伝子を挿入したニワトリを作製し、鶏卵を用いた有用タンパク質の安定な大量生産技術を目指しました。

具体的な手法は省略しますが、オスのニワトリの始原生殖細胞のオポアルブミンの翻訳開始点にインターフェロン遺伝子をゲノム編集することで、この遺伝子を持った精子を作製しました。これをメスのニワトリと交配させ、次の世代のすべてのメスのニワトリは30~60mgのヒトインターフェロンを含む卵を5か月以上にわたって生み続けました。

このインターフェロンの価格は10μgあたり2~5万円と高額ですので、今回の技術での卵1個には6000万円以上に相当する量が含まれていることになります。今後この精製工程の確立が必要ですが、十分採算に合う生物工場といえるのかもしれません。

また同様な手法で他の有用タンパク質も生産可能であり、安価な有用タンパク質の製造法として期待できる気がします。