身体の大きいゾウは、小型哺乳類の数百倍もの細胞を持つため、ガンになる確率が高いはずですが、実際には少なくこれを「ペトのパラドックス」と呼ばれています。
人間は30兆個ほどの細胞からできており、さらに多くの微生物が共生することで活動しています。細胞は時間とともに分裂し、新しいものが古いものに置き換わっています。しかしこの細胞の入れ替えの過程において、遺伝子のコピーに失敗するのは避けられず、多くの場合この変異がガンのもととなっています。
2015年アメリカユタ大学の研究グループは、このパラドックスにまつわる重要な発見を発表しました。この発見はゾウにはガンを抑制するP53という遺伝子が多いということでした。人間の遺伝子には1組しか存在しないP53が、ゾウには何と20組も存在していることが分かりました。
動物の細胞が分裂するとき、P53は遺伝子の良否を診断する医者のような役割を担っています。この点は人間でもゾウでも変わりありません。
軽度な問題を抱えた細胞なら修復できますが、破損の度合いが大きい場合は、細胞がガン化するリスクがあるため、P53はその細胞を殺すように命じます。ほとんどの動物では細胞を修復する方法が取られますが、ゾウでは細胞を殺すケースが多いようです。
アメリカシカゴ大学の研究グループは、この細胞を殺してしまう遺伝子に目を付けました。アフリカゾウと小型哺乳類を対象に、他の遺伝子の違いについても調査を行いました。その結果浮かび上がったのが、生殖能力を高める働きのある「LIF遺伝子」の1つのLIF6という遺伝子でした。
生殖能力とガン予防は全く別のことのように思えますが、LIF6には別な機能、つまり傷ついた細胞を殺す役割があることを発見しました。
小さなウサギから巨大なクジラまで、哺乳類にはLIF遺伝子は1組しかありませんが、ゾウやその親戚、マナティーなどにはたくさんのLIF遺伝子があり、ゾウは7から11組も持っているようです。
なかでも、傷ついた細胞を殺す役割と関連があるのはLIF6だけで、これまでのところゾウ以外にはLIF6は見つかっていません。今回の研究によれば、LIF6がゾウの遺伝子に登場したのは、約5900万年前で、壊れた遺伝子だったものが進化するにつれてこの遺伝子も蘇ったようです。
ゾウがガンに悩まされない大きな体を手にすることができたのも、この復活のおかげかもしれません。実際研究グループが研究室でアフリカゾウの細胞のDNAを破壊すると、P53がそれを見つけLIF6遺伝子を作動させ、LIF6が破損した細胞を殺したと考えられる現象が観察されました。
このような研究成果はガンの予防にはつながりませんが、細胞数の多い生物はガン化を防ぐメカニズムを持っているというのは、面白い自然の摂理のような気がします。
人間は30兆個ほどの細胞からできており、さらに多くの微生物が共生することで活動しています。細胞は時間とともに分裂し、新しいものが古いものに置き換わっています。しかしこの細胞の入れ替えの過程において、遺伝子のコピーに失敗するのは避けられず、多くの場合この変異がガンのもととなっています。
2015年アメリカユタ大学の研究グループは、このパラドックスにまつわる重要な発見を発表しました。この発見はゾウにはガンを抑制するP53という遺伝子が多いということでした。人間の遺伝子には1組しか存在しないP53が、ゾウには何と20組も存在していることが分かりました。
動物の細胞が分裂するとき、P53は遺伝子の良否を診断する医者のような役割を担っています。この点は人間でもゾウでも変わりありません。
軽度な問題を抱えた細胞なら修復できますが、破損の度合いが大きい場合は、細胞がガン化するリスクがあるため、P53はその細胞を殺すように命じます。ほとんどの動物では細胞を修復する方法が取られますが、ゾウでは細胞を殺すケースが多いようです。
アメリカシカゴ大学の研究グループは、この細胞を殺してしまう遺伝子に目を付けました。アフリカゾウと小型哺乳類を対象に、他の遺伝子の違いについても調査を行いました。その結果浮かび上がったのが、生殖能力を高める働きのある「LIF遺伝子」の1つのLIF6という遺伝子でした。
生殖能力とガン予防は全く別のことのように思えますが、LIF6には別な機能、つまり傷ついた細胞を殺す役割があることを発見しました。
小さなウサギから巨大なクジラまで、哺乳類にはLIF遺伝子は1組しかありませんが、ゾウやその親戚、マナティーなどにはたくさんのLIF遺伝子があり、ゾウは7から11組も持っているようです。
なかでも、傷ついた細胞を殺す役割と関連があるのはLIF6だけで、これまでのところゾウ以外にはLIF6は見つかっていません。今回の研究によれば、LIF6がゾウの遺伝子に登場したのは、約5900万年前で、壊れた遺伝子だったものが進化するにつれてこの遺伝子も蘇ったようです。
ゾウがガンに悩まされない大きな体を手にすることができたのも、この復活のおかげかもしれません。実際研究グループが研究室でアフリカゾウの細胞のDNAを破壊すると、P53がそれを見つけLIF6遺伝子を作動させ、LIF6が破損した細胞を殺したと考えられる現象が観察されました。
このような研究成果はガンの予防にはつながりませんが、細胞数の多い生物はガン化を防ぐメカニズムを持っているというのは、面白い自然の摂理のような気がします。