ごっとさんのブログ

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ガン治療に貼りつく発光デバイス

2018-08-04 10:46:38 | 健康・医療
早稲田大学と防衛医科大学校らの研究グループが、抗ガン治療において患者への負担が少なく、高い治療効果が得られる無線給電式発光デバイスを開発したと発表しました。

光でガンを治療する光線力学療法(PDT)は、生体に投与した光増感剤が集まった病巣へ光を照射し、光化学反応によって発生する活性酸素でガンの細胞死を誘導する方法です。

最近こういった光反応によるガン治療法が色々開発されており、近赤外線を使った方法に関してはこのブログでも紹介しました。これはガンを認識する抗体に光で反応するフタロシアニンという化合物を結合させ、抗体がガンを認識し結合するところに近赤外線を当てて化学反応を起こし、ガン細胞を破壊するというものです。

この方法の欠点はガンを認識する抗体を使用するため、非常に高価になってしまう可能性があるところでした。

今回の方法は、出力が従来の1000分の1という極めて弱い光源を用いたメトロミックPOD(mPDT)という手法で、肝臓など体内深部の臓器にできた腫瘍直下に発光デバイスを貼りつけ、LEDを点灯させることでガン治療ができます。

しかし腫瘍と光源の位置がずれたりすると、十分な治療効果が得られないという課題もありました。そこで研究グループは、長期間安定して固定できる体内埋め込み型発光デバイスを開発しました。mPDTへの応用の目的として、シールの様に臓器や組織表面に張り付けるだけで位置ずれを防ぐことができるようです。

開発した発光デバイスは、膜厚が約600nmのシリコンゴム薄膜表面に、生体模倣型接着分子であるポリドーパミンをコーティングしました。これによって、生体組織への接着性を従来の約25倍向上させることができました。

発光デバイスを縫合しなくとも、最低2週間は生体組織上に固定させることが可能となりました。発光デバイスはNFCという方式の近距離無線通信の対応するLEDチップ(赤色と緑色)が組み込まれており、接着性を向上させたことで腫瘍部と光源のずれを防ぐことができました。

今回の実験では、担ガンモデルマウスの皮下に無線発光デバイスを貼りつけて固定し、光増感剤である「フォトフリン」を注射後、飼育箱の下に設置されたアンテナから、マウスに組み込まれたLEDに給電して10日間連続的に点灯させました。

この結果、光照射による治療によって明らかに腫瘍が縮退し、従来のPDTで用いる近赤外線の代わりに緑色の光で完全に腫瘍を消失させることに成功しました。

この手法は肝臓ガンや膵臓ガンといった深部臓器のガンに適用することが可能であり、極めて弱い光を用いるため、組織温度の過剰上昇や周囲臓器への熱障害といった副作用もないとしています。

こういった光療法というのも副作用のない抗ガン治療として期待できるのかもしれません。