ごっとさんのブログ

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服用1回のインフルエンザ薬登場

2018-11-08 10:19:16 | 
インフルエンザへの警戒が必要な季節となってきました。

今年はインフルエンザに罹ってしまったときの治療がかなり変わりそうという情報があります。厚生労働省は今年2月、塩野義製薬が開発したインフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」を承認しました。

薬は3月に発売され、今シーズンから本格的に使われる予定です。インフルエンザ治療薬は現在、経口薬のタミフル(1日2回を5日間)、吸入薬のリレンザ(1日2回を5日間)など4種類が使われています。

これらはすべて「ノイラミニダーゼ阻害薬」と分類されています。このメカニズムは私の理解では、インフルエンザウイルスがヒトの気道の粘膜細胞に感染し、細胞内に増殖するときに細胞内にシアル酸という糖を介して固定されています。

細胞外に出るときはこれを切断して拡散しますが、このときにノイラミニダーゼという酵素が必要になります。従来の薬はこの酵素を阻害し、ウイルスが細胞から出られなくする作用です。

一方新薬のゾフルーザは「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」というかなり長い名前の作用を持ち、細胞内でのウイルスの増殖自身を抑える働きがあります。

このメカニズムはやや専門的になりますが、ウイルスは自分自身では増殖できないため、宿主であるヒトに寄生して増殖します。

しかしウイルスは自分の遺伝情報を伝えるmRNAを持っていないため、宿主のmRNAの一部であるキャップ構造を奪い取ってウイルスのmRNAを作り、その情報を基に自分に必要なタンパク質を作り出します。この時にエンドヌクレアーゼという酵素が働くのですが、ソフルーザはその働き阻害するという作用です。

ソフルーザは従来の4種と同様、季節性のインフルエンザA型とB型の両方に使用することができ、服用は1回のみで十分有効とされています。この効果は、2016~17年に行われた治験で確認されています。

インフルエンザに感染した12~64歳の日本の患者1064人を対象に、ゾフルーザ、タミフル、プラセボの3群に分けて投与し、体内からウイルスが排出されるまでの時間を比べました。

その結果プラセボでは排出まで96時間かかったのに対し、タミフルでは72時間、ゾフルーザでは24時間でした。副作用も気になるところですが、副作用の発現率は4.4%と低く下痢などの軽い症状だけだったようです。

こういった新薬により簡単に治療が可能となりますが、やはりインフルエンザに罹らないことが重要です。しかし現在のワクチンではかなり怪しいので、暖かく過ごすくらいしかないのかもしれません。