コーヒーにまつわる遺伝子の話

1杯のコーヒーがなければ朝が始まらないという人もいれば、いくら睡眠不足でもコーヒーは飲めないという人もいます。

コーヒーに限らず、カフェインを少し摂取しただけで興奮したり、一晩中眠れなくなる人もいます。人によってなぜこれほどの違いが出るのかは、どうも遺伝子の違いにあるようです。

コーヒーを日常的に飲む人は、ある程度まで身体がカフェインに反応しにくくなりますが、毎日の摂取量を控えるだけでその状態は逆戻りします。しかしある遺伝子のＤＮＡの変異が一つでもあると、コーヒーを飲んで不安感を抱いたり、眠れなくなったり胸がむかつくといった症状が起こり、摂取を避けるようになると考えられています。

体内に入ったほとんどのカフェインの代謝を左右するのは二つの遺伝子です。CYP1A2という遺伝子は、接種したカフェインのおよそ95％を代謝する酵素を肝臓で作ります。またその酵素をどれだけ作るかを決める遺伝子があり、この二つがセットになって血流中のカフェイン量が制御されます。

代謝が早い人の場合、カフェインは体内に残りにくいため、脳がそれほど強く刺激されませんが、その酵素の少ない人はより多くんカフェインが体内に長時間残り、その影響も長引きます。

ＤＮＡの構成要素で、昼食後などに眠気を引き起こす一因にもなるアデノシンという物質があります。これは「興奮抑制作用」があり、脳を興奮させる物質の放出を減らしますが、カフェインがあるとアデノシンの代わりにアデノシン受容体と結びついて、興奮の抑えがきかなくなり眼が冴えるということになります。

アデノシン受容体の発現はADORと呼ばれる遺伝子によって制御されています。この多様性が、身体がカフェインにどう反応するかに影響していることを示す研究が多くあります。一日の早い時間に一口コーヒーを飲んだだけで眠れなくなる人がいるのは、これが一因と言われています。

フランスの国立保健医学研究所のグループによれば、カフェインの摂取量は、国によって、また個人によって大きく異なり、一部の人がカフェイン摂取後に頻脈や神経過敏といった副作用を経験しているという事実は、この遺伝子の発現量に関係しているとしています。

またドーパミン受容体遺伝子の多様性や脳に到達するカフェイン量を制御している遺伝子が、コーヒーの好き嫌いに影響を与えるという研究もあるようです。

このようにコーヒーにまつわる遺伝子が明らかになり、その多様性によって様々な作用が出るようですが、所詮コーヒーは嗜好品ですので、好きな人が飲みたいときに飲むといったことでいいような気がしています。