4月1日の記事で紹介し、以後西洋中世の女性神秘家たちを紹介するためにたびたび参照した G. Epiney-Burgard et E. Zum Brunn, Femmes Troubadours de Dieu, Éditions Brepols, 1988 の第一章は、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの生涯の伝記的記述に割かれている。享年八十一歳という当時としては例外的な長命を保ったヒルデガルトだが、幼少期から病弱だったようで、つねに体のどこかに痛みを感じていたらしい。それが薬草学の研究を促したということもあったろう。
その体質の記述の中に、 « météorosensible » という言葉が出てくる。Le Grand Rogert にも見当たらない言葉である。しかし、語構成からおよそ意味の見当はつく。確認のためにネットで調べると、思った通り、「気象の変化に過敏な体質」を意味することがその用例からわかる(こうしたちょっとした調べ物に関しては、ネットのおかげで本当に便利な世の中になったものだとつくづく思う)。日本語には「気象過敏」とでも訳せば意が通ずるであろう。
気象のちょっとした変化に心身が敏感すぎるくらいに反応するということは、他の人たちが感じないような自然の微妙な変化をより早く深く察知することができるということだが、それによって気持ちが上向き、体も軽快になるときはいいが、その逆の場合は、さぞ辛かろうと想像する。
そのような「特異」体質によってのみヒルデガルトの予言者的資質を説明することはもちろんできないが、その気象に対する敏感さが、他の人たちには聞き取れない、自然の中の囁くような「御言」を聴きとることを可能にはしていたことだろう。
哲学者の中にも「気象過敏」だと「診断」される人はいるに違いない。メーヌ・ド・ビランなど、その日記を読むと、かなり「重症」かも知れないと思わずにはいられない。他に誰がいるだろうか。