内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

個体化は新たな種々の個体化をもたらしうる ― ジルベール・シモンドンを読む(22)

2016-03-12 06:21:20 | 哲学

 昨日までILFIの「序論」をずっと読んできました。個体化(individuation)、前個体化的現実(réalité préindividuelle)、準安定性(métastabilité)などの根本概念のシモンドンによる規定を追ってきました。
 それらの規定を踏まえて、特に生命のレベルにおける個体化の特性を前提としながら、シモンドンは一つの仮説を提示します。その仮説は、物理学における量子についての仮説や潜在エネルギーの諸レベルの相対性に関する仮説と類比的だと言います。以下がその仮説です。
 個体化は、すべての前個体化的現実を汲み尽くすものではない。この現実の準安定的な体制は、個体によって保持されるだけでなく、個体によって運ばれもする。その結果として、構成された個体は、前個体的現実をいわば荷電されたままになっており、その現実のすべての潜在性によって活性化された状態で移動する。ある一つの個体化は、物理的システムにおける構造の変化のように相対的なものである。そこでは、あるレベルでの潜在性が残されており、種々の個体化がまだ可能な状態にある。前個体化的性質が個体に結びついたままになっていること、このことが将来の準安定的状態の源泉になっており、そこから新たに様々な個体化が発生しうる。
 この仮説を私なりに言い換えると以下のようになります。
生命の世界での個体化は、個体化以前の状態から個体化へと一回的・不可逆的に移行することではなく、個体化の結果として生じた個体は、その個体化以前の状態を内部に保持したまま、可動的な存在となり、そのことによって、別の場所・別の関係において新たな個体化を生成する原基となりうる。
 このような仮説からどのような帰結を引き出すことができるでしょうか。テキストの続きを読む前に、少し自分たちの頭で考えてみましょうか。

 それではまた明日。御機嫌よう。