内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

個体化の真の原理は媒介である ― ジルベール・シモンドンを読む(18)

2016-03-07 02:30:00 | 哲学

 シモンドンが個体化過程の物資レベルでの範型として挙げるのが、結晶体特に水晶体の形成過程であることはすでに述べた(こちらの記事を参照されたし)。
 この水晶体形成過程を考察することが、ミクロのレベルでの状態に基づいている現象をマクロのレベルで把握することを可能にする。この考察が、形成過程にある結晶体がまさにそれとして形作られていくときの活動の把握へと導く。この個体化過程は、予めそれぞれ別々に構成され存在していた形相と質料との結合ではなく、潜在性を豊かに包蔵した準安定的なシステムの只中に湧出する一つの解決である。このシステムの中に、いわゆる形相も質料もエネルギーも「先在」(« préexister »)しているということである。
 したがって、「個体化の真の原理は媒介である」(« Le véritable principe d’individuation est médiation », p.27)とシモンドンが言うとき、それは予めそれぞれに存在する諸項の間の媒介のことではないことは明らかである。互いに他を俟ってはじめて成立する諸項として生成する相互媒介性そのもの湧出が個体化だと言っているのである。
 シモンドンの個体化理論は、絶対媒介の論理に支えられている。非実体的個体化理論は絶対媒介を原理としている。
 ここに、私たちは、シモンドンの個体化理論と田辺元の絶対媒介の弁証法の接点を見出すことができる。