改革反対派の学生たちによる大学内建物の封鎖は火曜日夜で一応収束したはずだったのに、今朝、一部の学生が昨日までは封鎖の対象ではなかった建物に侵入しようと試みたため、普段人文系の授業が行われているキャンパス内の主要な建物がすべて大学当局によって閉鎖されてしまった。
午前中に授業を持っている同僚たちから逐次現場からメールで報告を受け、そうなるまでの情況の変化を追尾していた。
午後二時から学部三年生の授業を持っている同僚に自分の授業を休講にするかどうか、昼過ぎにメールで尋ねたところ、彼はぎりぎりまで待って結局休講にし、その旨学生たちにメールで通知した。その連絡を受け、同じ学部三年生の授業を彼の直後に同じ建物の別の教室で行う私も、学生たちに休講を伝えた。
ところが、その直後に、キャンパス内の広場で開かれていた学生総会が封鎖中止の決定を下した。すぐに学部長から、閉鎖された建物は午後二時に閉鎖解除になるとの通知が届いた。しかし、時すでに遅し。今さら休講の中止を伝えても、もう学生たちは来ないだろう。それでも、現状について、現場にまだ残っている何人かの学生たちと話せるかも知れないと思い、「もしまだキャンパス内にいるのなら、いつもの時間に教室に来てほしい」と一斉メールを自宅から送信してから、キャンパスに自転車で向かった。
いささかまだひんやりとした微風が吹き、春陽輝くキャンパス内には、芝生の上に車座になって喋っている学生たちが散見される。数百人の学生たちが参加したという緊迫した空気に包まれた総会の痕跡はもはや残っていなかった。
教室につくと、いつもは二十人余りの学生が来る教室に、男子学生が一人ポツンと座っていた。私のメールを見て来てくれたのだ。その学生と改革の内容と問題点について二十分ほど話した。彼自身は、むしろ選抜に賛成であった。それは選抜それ自体を肯定するというよりも、現状の入学システムがいわば「籤引き」のように偶然性に左右されており、それよりはましだという。彼と意見を同じくする学生は少なくない。
いずれにせよ、反対派たちは問題の核心を十分に把握せずに、騒ぎだけを大きくしただけに終わったと言わざるを得ない。教育省および大学当局の立場や対応を支持する気は私には毛頭ない。しかし、入学制度の改革が必要であることは誰もが認めるであろう。
結局、現に進行中の新システムによる志望者選抜は実行されるであろう。その意味で、もはや後戻りはできない。これから数ヶ月、九月の新学年開始まで、いや、その開始後も、フランスの大学にとって未曾有の膨大な作業に大学教員ならびに職員たちは忙殺され、同じく未曾有の混乱が発生することであろう。
不確かな情報によっていたずらに心を乱さず、現実の作業量を必要最小限に限定し、差し当たり穏当な結果が得られるように、これからの数ヶ月を冷静に乗り切っていきたい。