内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「夕焼け小焼け」― 私はどこに帰ることができるのか

2018-05-31 20:25:28 | 私の好きな曲

 普段、家で仕事をしているとき、ほとんどいつも音楽を低い音量で流しています。
 選曲は、ジャンルを問わず、作業効率を上げてくれそうな曲集か、集中力を高めてくれるという謳い文句は鵜呑みにしないにしても、集中を妨げない穏やかな曲になることが多いです。人によって好みもあることでしょうから、一概には言えませんが、私の場合、器楽曲が圧倒的多数です。特にピアノソロですね。
 先月だったか、誰が弾いているのかも気にせずに、日本のメロディーを集めたピアノソロ曲集をアップル・ミュージックでふと選び、ストリーミングで流していました。そうしたら、懐かしい童謡「夕焼け小焼け」が流れはじめたのです。
 自分でも驚いたのですが、幼少期からそれこそ何度聞いたか知れないその曲が久しぶりにゆったりとした速度で流れてきて、少し耳を傾けていると、涙が止まらなくなってしまったのです。数時間後に締切りが迫っている仕事があるというのに。
 そのときの感情をどう言い表したらいいのでしょうか。わけもわからず何かとんでもなく遠くまで来てしまって、帰り道を見失ってしまったことに気づいた小さな子供が感じるであろう心細そさにどうしようもなく胸が締めつけられてしまったとでも言ったらいいのでしょうか。
 演奏者は、作曲家・ピアニストである谷川賢作でした。本人はこういう紹介のされかたはきっと好まないでしょうけれど、お父さんが現代日本の最も優れた詩人の一人谷川俊太郎、お祖父さんが元法政大学総長で高名な哲学者谷川徹三です。
 それ以来、彼のアルバム(六枚ほどあるお父さんとのコラボレーション・アルバムも含めて)をよく聴いています。