内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

鬱々たる日々をゆっくりと丁寧に生きようと心がける

2019-04-05 23:59:59 | 雑感

 昨日の記事で述べたような精神状態にあるとき、無理に自分を奮い立たせようとはせず、むしろ沈んでゆく自分をしばらくそのままにしておきます。どうせ深さは知れたものだからです。それはちょうど水の中で足掻かず体の力を抜けば、自ずとまたすっと体が水面へと浮かんでくるようなものです。
 とはいえ、まったく何もしないでいると碌でもないことを考えがちではあるので、そういう体に悪い考えによって心を侵食されないように、一人で簡単にできる「対処療法」を実践するよう心がけています。療法というのも実践というのも大げさな話で、すっかり習慣化していて普段は特に注意することもなく日常的に繰り返していることをただゆっくりと丁寧にやるだけのことです。例えば、洗濯物をたたむとか、食器洗い、部屋の片付け、靴磨き、字を書く、なんでもよいのです。そうすることで、それらのものと自分との関係をあらためて確かめるというか、そういう一つ一つの細部から自分の日常が成り立っていることを確認するというか、まあそんな感じです。
 人それぞれですから、一般化するつもりはないのですが、私の場合は、こんなふうに日常の時間にゆっくりと丁寧に身を浸すことで少し気持ちが落ち着きます。それで何か問題が解決したわけではもちろんありません。それはそのままです。不安が雲散霧消したわけでもありません。それは心の奥に巣食っています。ただ、考えなくてもいいようなこと、考えても仕方のないことをいくらか抑制することはできます。
 本の読み方についても同様です。仕事柄、本は毎日読んでいるわけですが、普段は必要なところだけを走り読みするだけで済ませがちですが、特に好きな作品の二三頁を一言一言噛み締めながら読む。繰り返し読んでみる。それも声に出して読んでみる。あるいは、辞書を読みます。引くのではなく、一項目一項目隅から隅までゆっくり読むのです。最近は、大野晋[編]『古典基礎語辞典』を「服用する」ことが多いですね。今回は少し服用量が多くする必要があるようです。