こちらの時間では早朝、日本からとんでもないニュースが飛び込んできた。思わず「えっ」と大きな声が出てしまった。今日は、昨日の記事で予告した話題を取り上げる気にはさすがになれない。
日本ではすべての報道機関が安倍元首相が凶弾に斃れたニュースを報道し続けていることだろう。こちらのメディアもこぞって取り上げている。
ネットで見た銃撃直前の映像から推測するかぎり、犯人は元首相の背後すぐ近くにおり、あたりの様子を伺っているが、特に不審な点もなく、SPたちからマークされることもなく、発砲したようだ。それにしても、よくわからないのは、直近からの発砲であったにもかかわらず、外れた一発目の直後にSPが元首相の身の安全をすぐに確保せず、演説が続けられたことである。
白昼、周りに数百人の一般市民がいる中で起こったこの銃撃事件は衝撃的だ。詳しいことはわからないから臆断は避けたいが、元首相がこのようにいともたやすく凶弾の犠牲になってしまったことの影響は大きいだろう。当然、政府要人の警護は今後強化されるだろうが、選挙運動の真っ最中であり、もし候補者やその応援に駆けつけた政治家が街頭演説を続けるとすれば、模倣犯が出ないともかぎらない。国外への影響も懸念される。
ネット上の報道によると、今日の奈良での元首相の街頭演説は直前に決まったことだという。だとすれば、どうして犯人はこの機会を捉えることができたのだろう。かねてより周到な準備を進めていたのだろうか。今後の捜査による解明を待つしかない。
歴代最長政権として歴史に名を刻んだことは間違いない元首相が在任七年余りの間に行った政治にはまったく賛成できなかったが、このような非業の死を遂げられたことはやはり痛ましい。ご冥福をお祈りします。
ただ、一言、不謹慎な言い方が許されるならば、これで今回の選挙での自民党の圧勝はほぼ間違いないであろう。おそらく、政策論そっちのけで、「弔い合戦」(敵は誰?)とか「民主主義の危機」(誰がその危機を招いた?)とか、不適切な言葉を振り回して選挙戦を戦う自民党議員たちも出て来るであろうし、同情票が集まることも充分に予想される。
今回の銃撃事件を受けて、言論統制が強化されたり、一般市民の行動が制約されたり、反政府運動が弾圧されたりすることがないとは言えない。それによって今回の銃撃事件の背景にある政治・経済・社会の問題が隠蔽されるようなことがあってはならない。