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中国憲法評解(連載第11回)

2015-03-20 | 〆中国憲法評解

第六五条

1 全国人民代表大会常務委員会は、次に掲げる者によって構成される。

 委員長
 副委員長 若干名
 秘書長
 委員 若干名

2 全国人民代表大会常務委員会の構成員の中には、適当な数の少数民族代表が含まれるべきである。

3 全国人民代表大会は、全国人民代表大会常務委員会の構成員を選挙し、かつ、罷免する権限を有する。

4 全国人民代表大会常務委員会の構成員は、国家の行政機関、裁判機関及び検察機関の職務に従事してはならない。

 本条以下では、主として全人代の指導部に当たる常務委員会の構成や権限について定めている。全体として、旧ソ連最高会議幹部会を範例としている。

第六六条

1 全国人民代表大会常務委員会の毎期の任期は、全国人民代表大会の毎期の任期と同一とし、次期全国人民代表大会が新たな全国人民代表大会常務委員会を選出するまで、その職権を行使する。

2 委員長及び副委員長は、二期を超えて連続して就任することはできない。

第六七条

全国人民代表大会常務委員会は、次の職権を行使する。

一 この憲法を解釈し、及びこの憲法の実施を監督すること。
二 全国人民代表大会が制定すべき法律以外の法律を制定し、及びこれを改正すること。
三 全国人民代表大会閉会中の期間において、全国人民代表大会の制定した法律に部分的な補充を加え、及びこれを改正すること。但し、その法律の基本原則に抵触してはならない。
四 法律を解釈すること。
五 全国人民代表大会閉会中の期間において、国民経済・社会発展計画及び国家予算について、その執行の過程で作成の必要を生じた部分的調整案を審査及び承認すること。
六 国務院、中央軍事委員会、最高人民法院及び最高人民検察院の活動を監督すること。
七 国務院の制定した行政法規、決定及び命令のうち、この憲法及び法律に抵触するものを取り消すこと。
八 省、自治区及び直轄市の国家権力機関の制定した地方的法規及び決議のうち、この憲法、法律及び行政法規に抵触するものを取り消すこと。
九 全国人民代表大会閉会中の期間において、国務院総理の指名に基づいて、部長、委員会主任、会計検査長及び秘書長を選定すること。
一〇 全国人民代表大会閉会中の期間において、中央軍事委員会主席の指名に基づいて、中央軍事委員会のその他の構成員を選定すること。
一一 最高人民法院院長の申請に基づいて、最高人民法院の副院長、裁判員及び裁判委員会委員並びに軍事法院委員長を任免すること。
一二 最高人民検察院検察長の申請に基づいて、最高人民検察院の副検察長、検察員及び検察委員会委員並びに軍事検察院検察長を任免し、かつ、省、自治区及び直轄市の人民検察院検察長の任免について承認すること。
一三 海外駐在全権代表の任免を決定すること。
一四 外国と締結した条約及び重要な協定の批准又は廃棄を決定すること。
一五 軍人及び外務職員の職級制度その他の特別の職級制度を規定すること。
一六 国家の勲章及び栄誉称号を定め、並びにその授与について決定すること。
一七 特赦を決定すること。
一八 全国人民代表大会閉会中の期間において、国家が武力侵犯を受け、又は侵略に対する共同防衛についての国際間の条約を履行しなければならない事態が生じた場合に、戦争状態の宣言を決定すること。
一九 全国の総動員又は局所的動員を決定すること。
二〇 全国又は個々の省、自治区若しくは直轄市の緊急事態への突入を決定すること。
二一 全国人民代表大会が授けるその他の職権。

 全人代常務委員会の職権は多岐にわたるが、栄典の授与や特赦など通常は国家元首が行うような行為も含まれている。現在の中国には他国の大統領に相当する国家主席が置かれているが、ソヴィエト制の建前上は本来、ソヴィエト幹部会が集団的元首となるため、中国では全人代常務委員会にそうした痕跡が残されていると考えられる。

第六八条

1 全国人民代表大会常務委員会委員長は、全国人民代表大会常務委員会の活動を主宰し、全国人民代表大会常務委員会の会議を招集する。副委員長及び秘書長は、委員長の活動を補佐する。

2 委員長、副委員長及び秘書長をもって委員長会議を構成し、全国人民代表大会常務委員会の重要な日常活動の処理に当たる。

 全人代常務委員長は本来ならば集団的元首のトップとして、事実上の国家代表者となるはずであるが、その役割は現代中国では国家主席に譲られている。

第六九条

全国人民代表大会常務委員会は、全国人民代表大会に対して責任を負い、かつ、活動を報告する。

 全人代常務委員会は民主集中制原則(第三条第一項)により、自己の選出機関である全人代に責任と報告義務を負う。

第七〇条

1 全国人民代表大会は、民族委員会、法律委員会、財政経済委員会、教育科学文化衛生委員会、外務委員会、華僑委員会その他必要な専門委員会を設置する。全国人民代表大会閉会中の期間においては、各専門委員会は、全国人民代表大会常務委員会の指導を受ける。

2 各専門委員会は全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会の指導の下に、関係の議案を研究し、審査し、又はその起草に当たる。

 全人代には諸国の議会と同様に専門の常任委員会が置かれ、審議の分散・効率化が図られている。第一項所定の六つの委員会については、憲法上設置が義務づけられている。

第七一条

1 全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会は、必要があると認める場合は、特定の問題についての調査委員会を組織し、かつ、調査委員会の報告に基づいて、それに相応した決議を採択することができる。

2 調査委員会が調査を行うときは、関係のある全ての国家機関、社会団体及び公民は、これに対して必要な資料を提供する義務を負う

 国政調査権に当たる規定である。ただし、一党支配体制下では党の方針が優先され、全人代が独自の国政調査を発動することは困難である。

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