【第七二条】
全国人民代表大会代表及び全国人民代表大会常務委員会の構成員は、法律の定める手続きに従って、それぞれ全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会の権限に属する議案を提出する権利を有する。
本条以下は、主として、全人代代表(代議員)の権限について定めている。全人代代表はソヴィエト代議員を範としているが、実態としては諸国の国会議員に近くなっている。その主要な権限は、本条の議案提出権と次条の質問権である。
【第七三条】
全国人民代表大会代表は全国人民代表大会の開会中に、また、全国人民代表大会常務委員会構成員は全国人民代表大会常務委員会の開会中に、法律の定める手続きに従って、国務院又は国務院の各部及び各委員会に対する質問書を提出する権利を有する。質問を受けた機関は、責任を持って回答しなければならない。
【第七四条】
全国人民代表大会代表は、全国人民代表大会議長団の許諾がなければ、また、全国人民代表大会閉会中の期間においては全国人民代表大会常務委員会の許諾がなければ、逮捕されず、又は刑事裁判に付されない。
本条及び次条は、全人代代表の不逮捕及び免責特権を定めている。日本国憲法にも定めのある国会議員の特権と同様のものであるが、不逮捕にとどまらず、訴追免責まで認められているのは特徴的である。
【第七五条】
全国人民代表大会代表は、全国人民代表大会の各種会議における発言又は表決について、法律上の責任を問われない。
【第七六条】
1 全国人民代表大会代表は、模範的にこの憲法及び法律を遵守し、国家機密を保守するとともに、自己の参加する生産活動、業務活動及び社会活動において、この憲法及び法律の実施に協力しなければならない。
2 全国人民代表大会代表は、選挙母体及び人民との密接な結びつきを保持し、人民の意見及び要求を聴取し、及び反映し、並びに人民のために奉仕することに努めなければならない。
全人代代表の義務・責務に関する規定である。全人代代表は国会議員のように事実上の専業ではなく、本業との兼職が原則であるため、それぞれの生産現場等で憲法・法律の実施に協力し、また選挙母体及び有権者人民との密接な結びつきも求められる。なお、第一項で全人代代表に国家機密の保守義務が課せられているのは、ひるがえって第七三条の質問権を大きく制約することになるだろう。
【第七七条】
全国人民代表大会代表は、選挙母体の監督を受ける。選挙母体は、法律の定める手続きに従って、その選出した代表を罷免する権利を有する。
民主集中制のため、全人代代表は命令委任により、選挙母体からのリコールを受ける。この点は、自由委任が基本の国会議員とは大きく異なる。
【第七八条】
全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会の組織及びその活動手続きは、法律でこれを定める。