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スウェーデン憲法読解(連載第22回)

2015-03-27 | 〆スウェーデン憲法読解

第一一章 司法

 本章及び次章はそれぞれ司法及び行政に関わる章である。日本国憲法はじめ他国の憲法では行政→司法の順で定められるのが通例であるところ、司法→行政の順となるのは、スウェーデン憲法の特徴である。この順番は単なる偶然ではなく、スウェーデンでは基本法第一章第九条に「裁判所及び行政機関並びに他の行政上の任務を遂行する機関は、その活動において、すべての人の法の下の平等を考慮し、客観性及び公平性に配慮しなければならない。」とあったように、行政執行も司法的な原理に準じて行なわれることに由来するものと考えられる。

裁判所

第一条

1 最高裁判所、控訴裁判所及び地方裁判所は、通常の裁判所である。最高行政裁判所、行政控訴裁判所及び行政裁判所は、通常の行政裁判所である。最高裁判所、最高行政裁判所、高等裁判所及び高等行政裁判所により事件の審理を受ける権利は、法律により制限することができる。

2 他の裁判所は、法律により設置される。ある一定の場合における裁判所の禁止については、第二章第一一条第一項において定める。

3 最高裁判所又は最高行政裁判所の裁判官は、正規の裁判官として現に任命されているか、すでに任命された者のみが務めることができる。正規の裁判官は他の裁判所でも務める。ただし、特定の集団又は特定の事件群を審理するために設置された裁判所については、法律で例外を定めることができる。

 スウェーデン司法は通常裁判所系列と行政裁判所系列の二元制を採り、それぞれが三審制による。

第二条

裁判所による司法の任務、裁判所の組織の大綱及び裁判手続については、統治法が言及する観点とは別のものから、法律で定める。

 司法は専門技術性が高度な権力組織であるため、裁判所法のような特別法による別途規定が必要となる。

司法の自律性

第三条

いかなる官庁も、議会も、裁判所が個別の場合においてどのように判断し、又はその他の個別の場合においてどのように法の規定を適用するかを決定してはならない。また、いかなる他の機関も裁判の任務を個々の裁判官にどのように配分するかを決定してはならない。

 司法の独立を決定と権限配分の観点から明快に定めた規定である。

第四条

司法の任務は、基本法又は議会法から導かれる範囲を超えて議会により行われてはならない。

 司法権は原則として裁判所にあることを明確に確認している。ただし、選挙争訟(基本法第一二条)など例外的に議会が司法的任務を行なう場合も認められている。

第五条

私人間の法的紛争は、法律の規定によらずに、裁判所以外の官庁により、解決されてはならない。

 逆に読めば、裁判外の紛争解決は法律の規定が認める場合には許されるということである。紛争の司法的解決の原則を示している。

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