2005,2006,2012アメリカ東部の旅より
2005年6月、ニューヨークのど真ん中、メトロポリタン美術館の屋上
セントラルパークのビル群と呼応している。そう考えてつくられた作品なのか、キュレーターが「ここに置いたらおもしろい」と思ったのかはわからない。
でも、ここでなければ成り立たない展示なのは確か。
こういう展示を楽しませてくれる美術館をこそ訪れたいと思う(^.^)
**
エジプトの神殿をまるごともってきてしまうなんて
アメリカでなければできないだろうなぁと思う。
1957年にはじまるアスワンハイダム建設で出現するナセル湖の底に沈む位置にあった建物を救済する国際キャンペーンがきっかけ。
あのアブシンベル神殿がと同じタイミングで世界が尽力して救った建物はエジプト国内で19、上流のスーダンで3。
このデンデュール神殿はそのひとつ。
↑このような姿で湖に沈むのならば、
↑ニューヨークでこんな風に再構築して世界中の人に記憶されてゆく方が、
人類がとるべき良策だったにちがいない。
ここから「世界遺産」の考え方がはじまったのはよく理解できる。
※移築五十周年のページで、THE METがどのようにこの場所を使ってきたかが語られています
周囲に展示されているエジプトの発掘物も興味深い。
カイロとはちがうけれど良質のモノをしっかり解説して展示してある。
紀元前14世紀新王朝時代の女王の顏の一部。
人物は特定されていないが、アケナトンの母か娘かではないかとされる。
つまり、あのツタンカーメンとも近しい人物。厚い唇の雰囲気、似てます。
↑黄色の碧玉。カケラだけれど、女性的な造形と高貴さまで感じさせる。
そのように見えるように展示してある、ということかもしれない。
カイロの博物館にあったらどのぐらい注目されていただろうか。
水晶のライオン↓
↑紀元前3100-2900年、エジプト王朝時代の黎明期にこんなライオンが像が彫られていた。
水晶は割れやすいので彫刻素材としては難しい。
ライオンの姿を単純化しつつリアルに見せてくれて、見飽きない。
カイロのような巨大彫刻もミイラ群もないけれど、The METのエジプト展示は他の美術館のエジプト展示ではみたことがない。
***
ゴッホの「アイリス」もあった
このアイリスの背景は白、ですよね?
しかし…
ゴッホは1890年の日記に「背景がピンクのアイリスの絵を画いた」と書いており、それがこの作品だと解説版にあった。
紫の花との色の対比を考え、補色の実験をしていた。
描かれてから百年以上が経過し、そのピンク色は実質的に白になってしまっている。
だとすれば、この絵を初めて目にして「すごくきれいな色」と感じたとしても、それはゴッホがはじめから意図したものでは、ない。
優れた表現作品というのは、絵画でもその他何でも、製作者の意図したことを越えた評価を得るようになるものだと思う。
この場合、褪色しても作品の価値は落ちていない。
この作品はゴッホの死後、その母によってずっと所有されていた。
「ひまわり」もある↑※ロンドンやミュンヘンにあるものとは別の形状のもの
すぐに思い出したのは↓オランダの「クレラー・ミュラー美術館」にある似た構図の作品↓
解説版によると似た構図のものは、アムステルダムのゴッホ美術館・ベルン美術館にもあって、「これらはメトロポリタンが所蔵するカンヴァスの準備作品のように見える」と書かれていたが、実際に見てみるとどれもが充分完成作に思える。
前者は豪華な金色の額に入っていて、後者はシンプルな木枠。だがそれは作品の優劣にはならない。
解説版に書かれていたエピソードをもうひとつ。
「ゴーギャンは小さめの二作品を持っていたのだが、南の海(タヒチをさす)への渡航資金のために売ってしまった」
****
ブリューゲルも
ウィーン美術史美術館の「冬の狩人」は、個人的にブリューゲル作品の中で最も好きな一枚だ。
この↑ニューヨークの「収穫」は、同じ「季節シリーズ」として制作されたもの六枚の絵うちの一枚だと解説されていた。
言われてみれば、この二枚には、大きさやその雰囲気に似た雰囲気が感じられる。
季節とそこに生きる人の生活。
「冬の狩人」の、寒くてお腹を減らして帰ってくる狩人と犬。
※ウィーン美術史美術館を訪れた時のブログからごらんいただけます
対照的にこの収穫の風景には、太陽の陽にぬくぬくとした藁の上でひなたぼっこする暖かさが感じられる。
そして、この絵でいちばん驚かされたのは、背景の巧みな描かれ方。
そこだけ拡大したのが写真上、これだけで見るべき一枚の風景画になっている。
ダ・ヴィンチの絵の背景は巧みではあっても、それだけでこんな一枚の絵にはならないように思う。
*****細かく書ききれないので以下にダイジェストを、次回訪れる時(いつ?)まで
ミロが二十代のころの作品。後年の作品と違う?似てる?
ロダン制作のマーラー頭部。神経質そうな指揮者の表情。
ジャコメッティが兄弟が飼っていた猫を
レンブラント
セザンヌの初期作品
アクション・ペインティングのポラック
ニュージーランドセクション
「デラウェア川を渡るワシントン」は、独立戦争時のエピソード。18世紀の歴史らしい雰囲気。
光琳の「八つ橋図屏風」は根津美術館所蔵の国宝「燕子花図屏風」と同様の完成度。日本にあったらこれも国宝指定されていたことだろう。
こちらはイサム・ノグチの作品
2005年6月、ニューヨークのど真ん中、メトロポリタン美術館の屋上
セントラルパークのビル群と呼応している。そう考えてつくられた作品なのか、キュレーターが「ここに置いたらおもしろい」と思ったのかはわからない。
でも、ここでなければ成り立たない展示なのは確か。
こういう展示を楽しませてくれる美術館をこそ訪れたいと思う(^.^)
**
エジプトの神殿をまるごともってきてしまうなんて
アメリカでなければできないだろうなぁと思う。
1957年にはじまるアスワンハイダム建設で出現するナセル湖の底に沈む位置にあった建物を救済する国際キャンペーンがきっかけ。
あのアブシンベル神殿がと同じタイミングで世界が尽力して救った建物はエジプト国内で19、上流のスーダンで3。
このデンデュール神殿はそのひとつ。
↑このような姿で湖に沈むのならば、
↑ニューヨークでこんな風に再構築して世界中の人に記憶されてゆく方が、
人類がとるべき良策だったにちがいない。
ここから「世界遺産」の考え方がはじまったのはよく理解できる。
※移築五十周年のページで、THE METがどのようにこの場所を使ってきたかが語られています
周囲に展示されているエジプトの発掘物も興味深い。
カイロとはちがうけれど良質のモノをしっかり解説して展示してある。
紀元前14世紀新王朝時代の女王の顏の一部。
人物は特定されていないが、アケナトンの母か娘かではないかとされる。
つまり、あのツタンカーメンとも近しい人物。厚い唇の雰囲気、似てます。
↑黄色の碧玉。カケラだけれど、女性的な造形と高貴さまで感じさせる。
そのように見えるように展示してある、ということかもしれない。
カイロの博物館にあったらどのぐらい注目されていただろうか。
水晶のライオン↓
↑紀元前3100-2900年、エジプト王朝時代の黎明期にこんなライオンが像が彫られていた。
水晶は割れやすいので彫刻素材としては難しい。
ライオンの姿を単純化しつつリアルに見せてくれて、見飽きない。
カイロのような巨大彫刻もミイラ群もないけれど、The METのエジプト展示は他の美術館のエジプト展示ではみたことがない。
***
ゴッホの「アイリス」もあった
このアイリスの背景は白、ですよね?
しかし…
ゴッホは1890年の日記に「背景がピンクのアイリスの絵を画いた」と書いており、それがこの作品だと解説版にあった。
紫の花との色の対比を考え、補色の実験をしていた。
描かれてから百年以上が経過し、そのピンク色は実質的に白になってしまっている。
だとすれば、この絵を初めて目にして「すごくきれいな色」と感じたとしても、それはゴッホがはじめから意図したものでは、ない。
優れた表現作品というのは、絵画でもその他何でも、製作者の意図したことを越えた評価を得るようになるものだと思う。
この場合、褪色しても作品の価値は落ちていない。
この作品はゴッホの死後、その母によってずっと所有されていた。
「ひまわり」もある↑※ロンドンやミュンヘンにあるものとは別の形状のもの
すぐに思い出したのは↓オランダの「クレラー・ミュラー美術館」にある似た構図の作品↓
解説版によると似た構図のものは、アムステルダムのゴッホ美術館・ベルン美術館にもあって、「これらはメトロポリタンが所蔵するカンヴァスの準備作品のように見える」と書かれていたが、実際に見てみるとどれもが充分完成作に思える。
前者は豪華な金色の額に入っていて、後者はシンプルな木枠。だがそれは作品の優劣にはならない。
解説版に書かれていたエピソードをもうひとつ。
「ゴーギャンは小さめの二作品を持っていたのだが、南の海(タヒチをさす)への渡航資金のために売ってしまった」
****
ブリューゲルも
ウィーン美術史美術館の「冬の狩人」は、個人的にブリューゲル作品の中で最も好きな一枚だ。
この↑ニューヨークの「収穫」は、同じ「季節シリーズ」として制作されたもの六枚の絵うちの一枚だと解説されていた。
言われてみれば、この二枚には、大きさやその雰囲気に似た雰囲気が感じられる。
季節とそこに生きる人の生活。
「冬の狩人」の、寒くてお腹を減らして帰ってくる狩人と犬。
※ウィーン美術史美術館を訪れた時のブログからごらんいただけます
対照的にこの収穫の風景には、太陽の陽にぬくぬくとした藁の上でひなたぼっこする暖かさが感じられる。
そして、この絵でいちばん驚かされたのは、背景の巧みな描かれ方。
そこだけ拡大したのが写真上、これだけで見るべき一枚の風景画になっている。
ダ・ヴィンチの絵の背景は巧みではあっても、それだけでこんな一枚の絵にはならないように思う。
*****細かく書ききれないので以下にダイジェストを、次回訪れる時(いつ?)まで
ミロが二十代のころの作品。後年の作品と違う?似てる?
ロダン制作のマーラー頭部。神経質そうな指揮者の表情。
ジャコメッティが兄弟が飼っていた猫を
レンブラント
セザンヌの初期作品
アクション・ペインティングのポラック
ニュージーランドセクション
「デラウェア川を渡るワシントン」は、独立戦争時のエピソード。18世紀の歴史らしい雰囲気。
光琳の「八つ橋図屏風」は根津美術館所蔵の国宝「燕子花図屏風」と同様の完成度。日本にあったらこれも国宝指定されていたことだろう。
こちらはイサム・ノグチの作品