踊る小児科医のblog

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雪辱とリベンジ(revenge)は全然違う

2005年08月02日 | SPORTS
英語は苦手なのでこの辺の感覚は自信がないのですが、「リベンジ」なんて普通に使われる言葉じゃないような気がする。「今度アイツに-あるいはライバル校に-リベンジしてやるんだ」(←この部分は英語で話されていると想像してください)なんて言ったら会話が凍りつき、下手するとテロ未遂で警察に届けられるかもしれない。

私の記憶では、この言葉は西武の松坂が使い出してそれを他のスポーツ選手や若者、そしてマスコミやアナウンサーまでもが真似して「気軽に」使うようになり、すっかり一般的になったように思う。それまで、revengeなんて言ってもそんな英単語すら知らない人もいたんじゃないだろうか。

松坂「アテネでリベンジ」 メダル獲得へ意欲
 西武・松坂大輔投手(20)がアテネ五輪での“リベンジ”を誓った。…

そんなこんなで、今では堂々と新聞の見出しにまで登場。

リベンジの夏-甲子園に挑む山田高ナイン
 第87回全国高校野球選手権が6日、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕、本県代表の山田高が夏6回目の甲子園に挑む。昨夏は延長十二回、天理(奈良)にサヨナラ負け。そして今春は沖縄尚学に3-16の大敗を喫した。「今度こそ自分たちの野球を」。悔し涙を二度流した山田高ナインの“リベンジの夏”が始まる。

しかし、正々堂々と戦ってきている選手に対して、これはやっぱりひどいんじゃないだろうか。
失礼じゃないのか。
とは考えなかったのだろうか。

私の感覚では、リベンジは汚い言葉・汚い行為で、恨みを晴らすためには、どんな手段を用いても目的が果たせればいい。「前回負けたから今度こそ勝つぞ」というのとは全く違う。
(というニュアンスだと思うのですが、間違ってますか?)
赤穂浪士の討ち入りもリベンジかもしれないが、あれは個人の怨みといった狭い小さな感情からくる行動ではなく、社会の公平・公正を求めて命をかけた異議申し立てであったはず。
しかし、あれも英語で言うとやっぱりリベンジなのかな。

高校野球に戻ると、この場合は日本語に「雪辱」という美しい言葉があるのに、言葉のプロであるべき新聞社が、連載のタイトルにこんな「間違ったニュアンスで使われている外来語」を用いる鈍感さ。。
(記事は若い記者が書いているかもしれないが、タイトルには編集長のチェックが当然入っているはず)

ちなみに、先日も触れた調査で、中高年層でも間違った言葉として使われていることの多かった「汚名挽回」(正しくは「汚名返上」もしくは「名誉挽回」)。
これもリベンジだと思っている人が多いのかもしれない。

オンライン辞書で調べてみると、こんな感じです。
「give … his revenge 人の雪辱戦に応じる」という使い方もあるから、スポーツの試合で用いることも間違いとは言えないようですが。。

■ せつじょく【雪辱】
(名)スル
恥をそそぐこと。特に、勝負などに負けて受けた恥を、次に勝つことによってそそぐこと。
「―戦」「―を果たす」「次の試合で―を期す」

■ せつじょく 雪辱
・~する vindicate one's honor; wipe out a shame; 《競技》get even ((with)).
・~戦 a return match [game].

■ リベンジ 【revenge】
復讐(ふくしゆう)。仕返し。

■ re・venge
━━ n., v. 仕返し[復讐(ふくしゅう)](する) (She was ~d [She ~d herself] on her husband.); 恨み(を晴らす); 復讐の機会.
?give … his revenge 人の雪辱戦に応じる.
?have [take, get] one's revenge 恨みを晴らす ((on, upon)).
?in [out of] revenge for [of] …の仕返しとして.
?re・venge・ful ━━ a. 執念深い.
re・venge・ful・ly ad.
re・venge・ful・ness n.

■ おめい を― 【汚名】
不名誉な評判。悪名。
「―を着せられる」「―をそそぐ」「―返上」

■ おめい 汚名
disgrace; dishonor; one's bad reputation.
・~をすすぐ wipe off a disgrace.