熊本熊的日常

日常生活についての雑記

デザインのひきだし

2011年10月18日 | Weblog
そういう名前の雑誌を最近知った。一般向けのものではなく、「デザイン」も印刷関連についてのものである。毎号、全体のページの半分以上が印刷や紙のサンプルだ。内容はその業界の人以外には全く興味を喚起するようなものではないので、どれほどの部数が発行されているのか、重版というものがあるのか、というようなことは全く想像できない。私の手元にはこの雑誌の8号から14号までがあるのだが、いずれの号にも「初版限定実物見本」というものが付いている。オマケのようなもので、綴じ込まれていないので、書店などではビニールに包まれて並んでいる。ビニールで包まれているというだけでも読みたくなるものだが、私がこの本と出会ったのは書店ではないので、ビニールで包まれているどころか、装丁すら知らなかった。

「雑誌」と書いたり「本」と書いたりしているが、流通上では「定期的に出ている書籍」なのだそうだ。そう言われても、「雑誌」とどう違うのかわからないのだが。それで、「デザインのひきだし」をどのようないきさつで知ったのかというと、それほど前のことでもないのに記憶があやふやなのだが、間違いないのは、どこかでこの本の編集長である津田淳子氏へのインタビュー記事を読んだことだ。それが面白くて、バックナンバーを数冊、行きつけの書店の在庫にあったものを注文して取置いてもらって手にしたのが最初だ。読んだら面白かったので、追加で別のバックナンバーを注文し、それを取りに出かけてみたら店頭に最新号である14号が並んでいた、ということなのである。

何がどう面白いのか、ということは言葉では説明できないのだが、印刷というものが好きなのである。今は手軽に入手できるプリンターで、個人でも知恵と工夫次第でかなりいろいろな印刷物を制作することができるが、書籍や商業印刷のような大規模なものとなると、やはりそれなりの長大な工程がある。それぞれの工程にそれぞれの技術やノウハウがあって、そこに無数の無名の人々がそれぞれのプライドを持って関わっている姿がなんとなく透けて見えるところが好きだし、紙の手触りとか匂いのような物理的な佇まいも好きだ。

本の内容というのは、根本のところは昔も今もそれほど大きくは変わっていなくて、それぞれの時代に合わせて表層だけを削ったり継ぎ足したりしているように思えてならない。そう思うようになったのは40代も後半に入ってからだ。それで近頃はめっきり「話題の本」の類は手にしなくなった。そうなると、逆に本代が高騰する。なぜかというと、わざわざ買うような本はそれほど大きな部数が流通しないものが多くなるので、気がついたときに手に入れておかないと、すぐに絶版になってしまうからだ。結果として、積ん読だけの本が狭い部屋を侵食することになり、シンプルな生活を目指しているはずなのに、収納に困るという誰もが抱える問題を共有するはめに陥る。買う前に読む、という原則をしっかりと確立しないといけないのだが、最近は眼が弱くなった上に、震災以来、首都圏の鉄道では照明を絞っているので、若い頃のように移動中に本を読むというのが難儀になった。少し、生活を見直して行動を改めないといけないと思っている。

ちなみに、「デザインのひきだし」の15号は来年2月の発売予定だそうだ。それまでに生活は改まっているだろうか。