万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本の二の舞の回避策は健全財政の維持では

2010年01月04日 15時54分52秒 | アメリカ
「失われた10年、二の舞を避けよ」 米紙が積極策提言(朝日新聞) - goo ニュース
 ニューヨーク・タイムスは、バブル崩壊後の日本経済を引き合いに出して、アメリカの景気回復には、積極的な景気対策、つまり財政拡大政策を必要とする、との見解を示したようです。しかしながら、日本国の「失われた10年」とは、巨額の景気対策を実施したにも拘わらず、財政赤字だけが積み上がり、景気が浮上しなかったことにあるのではないでしょうか。

 米紙の記事にでは、「失われた十年」の原因として、不良債権の処理の失敗、景気回復に先立つ消費税増税、景気刺激策の停止などを挙げています。しかしながら、実際には、当時の日本国政府は、不良債権を抱えていた金融機関に対して多額の公的資金を投入し、現在では、不良債権の処理と公的資金の返済は終了しつつあります(この措置があったからこそ、邦銀は、リーマン・ショック以降の金融危機に耐えられた?)。また、消費税増税の景気冷却効果は、景気の動向に拘わらず、一般的な現象とも言えます。さらに、国と地方を合わせて1000兆円にも上る現在の日本国政府の財政赤字は、景気対策の名の下で、見境のない財政出動が継続されてきた証しでもあります。

 もし、アメリカが、日本国の「失われた10年」から何かを学ぶとしたら、それは、決して、無意味な財政拡大ではないはずです。しかも、預金率の低いアメリカの場合には、国債の消化は海外依存となり、中国の保有が増えるとすれば、対中関係の弱腰を招くかもしれなせん(最近、中国政府は、米国債の保有を減らしているとも報じられていますが・・・)。財政拡大策と弱腰の対中政策の組み合わせは、双子の赤字を悪化させる可能性もあります。アメリカ政府は、中国に対して元高圧力をかけたり、対抗措置を講じるなど、貿易上の競争条件の公平化を図ることで、経済の不均衡を是正するほうが得策なのではないかと思うのです。

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