万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

鳩山元首相の不自然な原発国有化論―政府の責任は隠蔽か

2011年12月16日 11時16分42秒 | その他
福島第1原発の国有化を=実態解明のため―鳩山元首相ら(時事通信) - goo ニュース
 鳩山元首相は、英科学誌の「ネイチャー」に投稿し、福島第一原子力発電所の実態を解明するためには、福島第一原発を国有化すべき、と主張しているようです。

 科学誌ということもあって、事故への関心は、科学的な側面に向けられており、「ネイチャー」の表紙には、黒塗りされた東電の報告書がデザインされています。この表紙が物語るように、「ネイチャー」は、科学者の視点から、東電が、原発事故に関する正確な科学的なデータを提供しておらず、そのことが、事故の実態解明を難しくしていることを、特に問題視しているようです。もちろん、正確なデータに基づいた分析と検証が行われなければ、原子炉内でどのような核反応が起きたのかは分かりませんし、この教訓を、今後の安全対策に活かすこともできません。ですから、こうした作業は必要ではあるのですが、この作業のために、国有化まで必要かどうかとなりますと、説得力は乏しくなります。加えて、原発事故の解明には、事故に至るまでのプロセスと、事故後の科学的な反応プロセスの二つの側面があります。後者は、科学的な検証によって解明できますが、前者については、人間の判断や行為が問題となりますので、科学の問題領域から外れます(それとも、科学的なデータ解析により、ベントの遅れなど、政治的な責任も明らかになるのか…)。

 国有化論は、科学的な解明を根拠としていますが、国有化されますと、政府の責任の方は、不問に付され、隠蔽される可能性もあります。視察自粛の申し合わせを無視して、敢えて現場に視察に向かった菅首相の不自然な行動は、早くから事故との関連性が指摘されてきました。鳩山元首相の真意は、一体、どこにあるのでしょうか。鳩山元首相の行動も、どこか、不自然なのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする