万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原発再稼働とTPPとの奇妙な温度差

2011年12月26日 15時49分31秒 | 日本政治
九電の全原発が停止…家庭・企業に5%節電要請(読売新聞) - goo ニュース
 TPPをめぐる論争は、日本国の世論を二分する勢いです。反対論の中には、TPPへの参加が、日本国経済の崩壊の序曲となるとする見解も少なくありません。しかしながら、原発再稼働問題の方が、実は、日本経済への影響が大きいのではないかと思うのです。

 政府の試算によりますと、TPPに参加した場合、日本国のGDPは、10年間で2.7兆円から3.2兆円増加するそうです。この数字は、低過ぎるとする指摘もありますが、年単位に換算しますと、わずかに2700億円ということになります。ところが、原発再稼働をせずに、電源を火力に頼る状態が続きますと、全電力会社の燃料費の合計で、1年間で3兆円の経費がかかるそうです。国産のエネルギー源はほとんどありませんので、3兆円分の貿易黒字が消えることになり、将来的には、貿易収支が赤字に転落するとも予測されています。また、先日、東電が、燃料費の増加により、企業向けの電力料金を値上げする方針を示しましたが(産業の空洞化を促進…)、製品価格に上乗せされれば消費者負担となりますし、後日、家庭用電力も値上げとなれば、家計への負担はさらに重くなります。おそらく、原発再稼働をさせない場合、それが日本経済に及ぼす影響は、TPPを遥かに凌ぐのではないかと考えられるのです。しかも、TPPのようなプラス面はほとんどなく、マイナス面ばかりなのです。

 政府もマスコミも、原発再稼働を止めることによる経済へのマイナス影響を、国民には充分に説明していません。影響力の大きさを考えれば、この温度差は奇妙でもあります。TPPよりもさらに深刻な打撃を経済に与えるかもしれないのですから、国民もまた、脱・反原発の強力なアピールに惑わされずに、危機感を以って原発再稼働問題を考えるべきではないかと思うのです。

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コメント (8)
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