万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

忍び寄る中国―北朝鮮は属国に

2011年12月20日 14時48分05秒 | アジア
金正日氏の肖像焼く映像…中国のTV編集ミス?(読売新聞) - goo ニュース
 朝鮮半島の王朝は、歴代、中国の冊封体制に組み込まれており、李氏朝鮮に至っては、清国から屈辱的な三跪九叩頭を強要されるなど、まさに属国状態にありました。昨日、突然に報じられた北朝鮮の金正日総書記死去のニュースは、北朝鮮が、未来に進むのではなく、過去に後退する可能性をも示唆していると思うのです。

 未来に向けて進むシナリオにあっては、北朝鮮では体制崩壊により独裁体制が消滅し、民主化と自由化が実現されます。国民は、恐怖政治と飢餓から解放され、同時に、核・ミサイル問題や拉致事件も解決されるチャンスが訪れるのです。その一方で、北朝鮮が過去に戻るシナリオですと、中国共産党の主席が、金正恩体制を承認する代わりに、北朝鮮は、中国の属国となることを受け入れることになります。属国となった以上、北朝鮮は、独自に防衛権や外国権を行使することは最早できず、あらゆる側面で、中国の介入を受けることになるのです。つまり、北朝鮮は、独立主権国家ではなくなることを意味しています。28歳の金正恩氏であれば、国家運営の経験も浅く、北朝鮮を傀儡化するのならば、これ以上、うってつけの人物はいません。死去の直前に、核放棄に向けた米朝関係の改善が進展し、その一方で、中国では、編集ミスと言われながらも、死去のニュースに際して金正日の写真が燃やされている映像が流されたそうです。これらの一連の出来事は、単なる偶然なのでしょうか。

 昨日の記事でも述べたように、独裁者が消えた時こそ、体制移行の最大のチャンスなのですが、残念ながら、過去の冊封体制に戻るシナリオも、完全には否定できません。さて、その時、北朝鮮の国民は、どのように反応するのでしょうか。反発するのか、それとも、卑屈に膝を折るのか…。そして、主権平等と民族自決の原則を掲げる国際社会は、この事態を許すのでしょうか。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする