万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

怪しげな日本国政府の中国国債の購入

2011年12月21日 14時39分04秒 | アジア
中国国債、日本が購入検討=首脳会談で判断へ(時事通信) - goo ニュース
 日本国政府は、100億ドル規模の中国国債を購入する方向で、中国政府と協議に入る方針とのことです。政府は、中国国債を購入する理由として、外貨準備の運用の多様化、日中の国債保有の相互性の促進、人民元の国際化への協力を挙げていますが、この中国国債の購入、あまりに不可解であり、国民に説明ができない背景がありそうです。

 第1に、政府が中国国債を購入するに際して使用される通貨は、人民元なのでしょうか。日本国は、アメリカ国債を大量に保有していますが、それは、ドル建ての外貨準備があるからです。この論理でゆけば、日本国政府は、人民元の外貨準備を相当額保有しており、その運用先として、中国国債を選んだことになります。しかしながら、このシナリオではないとしますと、為替市場から人民元を調達する必要がありますし(円売り元買い、ドル売り元買い、ユーロ売り元買い…?)、あるいは、中国政府との間で、何らかの取り決めを予定しているのかもしれません。元取引が制限されていることを考えますと、どこか、不自然です。

 第2に、中国政府が日本国の国債を保有する手段は、債券市場での購入と考えられますが、今回の中国国債の購入は、中国政府から、直接に購入するようです。このため、利率や償還期間などの条件については、中国政府が有利な形で、日本国政府が一方的に飲まされてしまう可能性があります。

 第3に、国債の相互持合いは、あたかも企業間の”株式の持ち合い関係”を想起させるのですが、同盟国でもない国に対して、敢えてこのような緊密な関係を構築する必要性はあるのでしょうか。

 第4に、中国政府は、一体、日本国の国債引き受けで調達した100億ドル分の資金を、どの分野の予算として振り向けるのでしょうか。もし、軍拡の資金に充てるとしますと、日本国は、”敵に塩を送る”に等しくなります。北朝鮮情勢も不透明となり、アジアが不安定化している中で、多額の資金を中国に貸すことは、果たして、日本国の政策として適切であるのか、疑問なところです。

 中国経済の行方についても、近いうちに、バブル崩壊が起きるとの見方もあり、外貨準備の流出も噂されています。中国国債を購入するぐらいならば、外交カードとして使われてきた中国政府が保有している日本国債を早期に償還したり、あるいは、世界大での拡大が懸念されている欧州の財政危機を支援した方が、得策なのではないかと思うのです。

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