イギリスをはじめ、米欧諸国では、新型コロナウイルス禍によって停止を余儀なくされてきた経済活動を再開させるために、免疫証明書の制度(免疫パスポートども…)が提案されているそうです。同制度は、抗体検査によって抗体の保持が確認された人に対し、免疫を有するとする証明書を発行するというものです。運転免許証が交付されれば道路での自動車の運転が許可されるのと同様に、免疫証明書を得ることができれば、その人は、経済活動への復帰が許されると共に自由な社会生活を送ることもできるようになるのです。
免疫証明書制度については、感染リスクを低減すると共に、経済活動の早期再開を実現する切り札として期待する声が聞こえる一方で、この案には、どこか奇妙な点があります。それは、同制度にあって想定されているウイルス検査は抗体検査であることです。つまり、抗体の有無が経済・社会生活復帰への絶対条件として設定されているのです。
しかしながら、抗体保有を保障する証明書を持つ人でなければ外部での経済、並びに、社会活動に参加できないとなりますと、奇妙で理不尽な事態が発生するかもしれません。既に懸念の声が上がっておりますように、仕事に就きたいがために、すなわち、証明書を得たいがために自発的に新型コロナウイルスに感染しようとする人が現れることも予測されます。自発的感染が増加すれば当然に重症化も増加し、医療崩壊を招きかねない状況となりましょう。しかも、同制度の下では、同ウイルスに感染していない健康な人でも証明書がなければ自宅に籠るしかなくなるってしまうのです。
最近、各国で実施された抗体調査の結果では、最も感染が深刻であったニューヨーク市でさえ抗体陽性率は24.7%であり、比較的低レベルに感染拡大を抑えてきた日本国に至っては数パーセントに過ぎないようです。集団免疫路線を選択したスウェーデンでも、首都ストックホルムでの陽性率はニューヨーク市と同程度の凡そ25%程度です。つまり、何れの国でも非感染者の方が圧倒的な多数ですので、同制度の下では、健康な人々が外出を禁じられる一方で、免疫証明を受けた少数の人々のみで経済を動かさざるを得なくなる事態も予測されるのです。もちろん、事務的な職種ではテレワーク等の形態での勤務もあり得るものの、同制度の導入は、労働人口の大幅な減少を意味します。
免疫証明書を得られる人の数が極めて少数であるとしますと、同路線を選択すれば、当然に‘ワクチンの開発と接種を急ごう’とする声が高まることとなりましょう。ワクチン開発に首尾よく成功すれば、大多数の人々が抗体を得ることができるからです。しかしながら、ワクチンの開発技術が進んだ今日にあってもHIVやインフルエンザ・ワクチンの効果が限定的であることが示すように、変異性の高いRNA型、並びに、免疫細胞にダメージを与えるタイプのウイルスに対する効果的なワクチンの開発には難航が予測されています。BCGのような免疫力そのものを活性化させるワクチンやコロナウイルス全般に効果を有するユニバーサル・ワクチンもあり得るものの(もっとも、免疫力強化はサイトカインストームのリスクと紙一重らしい…)、早急なワクチン開発が難しいとしますと、治療薬や治療方法の開発に重点を移す方が現実に即した合意的な判断のように思えます。しかしながら、国際社会の流れを見ますと、ワクチン接種を何としても推進したいワクチン圧力なるものが存在しているようなのです。
その理由は、新型コロナウイルス禍をワクチン・ビジネスのチャンスとしたい人々が手ぐすねを引いて待っているからなのでしょう。本日の日経新聞朝刊の記事によりますと(第3面)、WHOの要請を受ける形で、EU主催の国際会議がベルギーのブリュッセルで開かれたそうです(中国も参加しているので、WHOというよりも中国の意向が働いているかもしれない…)。40か国が参加した同会議では、治療薬やワクチン開発を支援するために総計で凡そ8500憶円の拠出が表明され、日本国も同額の凡そ10%、即ち、850憶円程度を負担するそうです(因みに、新型コロナウイルス被害の責任国であるはずの中国はわずか1.6%程度…)。一先ずは治療薬の開発も支援対象に上がってはいるのですが、ここで注目すべきは、同会議には、近年、ワクチン接種運動に熱心に取り組んでいるビル&メリンダ財団も参加していた点です。
WHOはチャイナ・マネーに篭絡されたとの批判を浴びていますが、大口の出資者となる同財団の意向を無視するとは思えません。つまり、全世界の諸国にあってワクチン接種へと誘導すべく、同財団が国際会議を舞台に積極的なロビー活動を仕掛けている可能性も否定はできないのです。そして、ワクチン・ビジネスは、抗体の保有を外部活動の条件とする免疫証明書制度の導入とセットとなっているとも推測されるのです。つい先日まで、WHOの立場は、免疫証明書について否定的でしたが、今後は、今般の会議を機に態度を変えるかもしれません。
免疫証明制度については、そもそも、屋外で活動したり、他の人々と対面で交流するに際して公的な証明書を必要とする社会でもよいのか、とする根本的な批判もあります(職業選択や営業の自由を大幅に制限してしまう…)。また、非感染者の方が多数であるならば、抗体検査ではなくPRC等の抗原検査によって陰性の証明を得た人に対し、免疫証明書ならぬ‘非感染証明書’を発行した方が経済へのマイナス影響をより低いレベルに抑えることができるはずです。加えて、免疫証明の議論における主たる関心の対象が免疫力、即ち、自らが感染するか否かにあり、他者への感染の有無を問う感染力については軽視されがちなところも、どこか自己中心的な発想のようにも感じられるのです(ワクチンを接種しても、感染力を有する可能性があるため?)。ワクチンをめぐる危うい現状を考慮しますと、政治的圧力、並びに、あらゆる民間のビジネス利権を廃してこそ、最も合理的で効果が高く、多くの人々が納得する対コロナウイルス対策に辿り着くことがきるのではないかと思うのです。