絵になる風景を求めて、名古屋を流れる2本の運河のうち「中川運河」沿いを歩いてきました。都心を貫くもう1本の「堀川運河」に比べて懐かしい風景が残っているはず、と出向いたのですが・・・。名古屋駅周辺のビルラッシュなど都心で展開される再開発の余波や、変化する産業立地の影響が中川運河にも及んでいる、との印象でした。
両岸に並ぶ棟続きの古い倉庫、トタン屋根やスレート葺の部品工場や作業場、そこから聞こえてくる機械の運転音や金属音、両岸をつなぐために数百メートルおきに架けられた橋。これが、中川運河風景の変わらぬイメージでした。少なくとも数年前までは――。
ところが、倉庫や作業場のいくつかが歯の抜けたように消え、作業場の音もあまり聞こえなくなっていたのです。
跡地の多くは雑草に覆われ、駐車場や資材置き場になっていましたが、新しいビルができたところも。
名古屋駅のツインタワーを背景に、大型クレーンが立ち並び、ブルドーザーや土砂を積んだトラックが行き来するための仮設道路や仮橋がつくられた一帯もありました。
両岸を結ぶ橋の架け替えや改修も、何カ所かで進行。水際の用地を補強するために運河に杭を打ち込む作業も、アクアラングの作業員らによって行われています。
ツインタワーなど高層ビルの姿を写していた運河の起点の水面には、新しいビルの姿が写っていました。
名古屋駅周辺の超高層ビルラッシュに代表される名古屋経済を反映しているとしても、そればかりではなさそうです。
もう一本の堀川運河下流域でも、工場や作業場の閉鎖・移転が起きています。大手企業の海外移転だけでなく、「取引先が(名古屋西部の工場地帯)などへ移ってしまったので、こちらもたたんで移るしかない」と何代目かの工場主の説明でした。
古い建物に対する地震対策や、津波に備えた岸辺の強化策なども運河沿いの風景を変えていくことでしょう。
もちろん、「いつかは絵にしたい」と思っていた中川運河の風景も、いくつか残っています。
でも、「時や時代は待ってくれない」を、改めて知った思いでした。
蛇足かもしれませんが、この時期の運河沿い歩きについてひとこと――。
僕が中川運河沿いを歩いた日も、かなりの猛暑。しかし、
そこは倉庫や工場はあっても、飲食店や木陰などの休憩場所は限られています。
ペットボトルを手に、わずかな緑や工場の建物の陰でひと息ついたり、ときおり川面を撫でる風にホッとするなど、覚悟していたとはいえ熱中症に気を配りながらの歩きになりました。ふだんは縁のない甘味喫茶の看板を発見した時は、躊躇せず飛び込んだものです。